九州新幹線「長崎ルート」はどう決着するのか

フリーゲージトレイン断念で完成図は見えず

一方の長崎県は、随所で「実現させよう!フル規格!」とアピールを強めている。長崎県では、福岡と結ばれる長崎本線の肥前山口―諫早間が単線、急曲線の隘路で振子特急をもってしても時間を要する状況の改善は、大いに望むものであった。そこで西九州ルートの費用負担を枠組みどおり受け入れる以上に、長崎本線上下分離区間の維持については佐賀県との距離的な按分を上回る負担も承諾した。ところが、観光県でもあるため福岡だけでなく山陽、関西地区直結への期待が大きかったのが、FGTの頓挫により、博多(もしくは新鳥栖)と武雄温泉で2度の乗り換えを余儀なくされる“後退”となってしまった。

分断される西九州ルートの先は見えず

そこで、新大阪―長崎間697kmのうち51km、わずか7.3%のみ整備方法が未定であるのはミッシングリンクであるとして、FGTが再検証に入ってまもない2017年7月からフル規格を要望、2018年3月に各種整備方式の比較検討結果が出され、4月に改めてフル規格を主張している。

『鉄道ジャーナル』2019年1月号(11月21日発売)。特集は「新幹線のこの先」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

比較検討で示されたデータにより、長崎―博多間は現行最速の特急より57分、対面乗り換え方式より31分短縮の約51分となり、新大阪へは乗り換えなしの約3時間15分と示し、投資効果(B/C)の3.3は北陸新幹線金沢―敦賀間や北海道新幹線新函館北斗―札幌間の1.1よりも大きく、収支改善効果も高い。さらに、東京―大阪間にリニア中央新幹線が開業した場合、長崎―東京間は現行の航空機(空港アクセス時間を加味)と同等で、佐賀―東京間は航空より30分早いと佐賀県のメリットも挙げ、東京―大阪のエリアに集中する訪日客を西九州全体に呼ぶため必要と、アピールする。

対するミニ方式については、時間短縮効果が薄まり工事期間中の在来線運行上の課題も多いことや、在来線を走るがための輸送障害を懸念し、輸送の安定性が劣るとしている。ゆえに長崎県は「西九州地域の発展に最も寄与するフル規格による整備を決定してほしい」と声を上げている。

この問題が解決しない限り、九州新幹線西九州ルートは武雄温泉駅での乗り換えが続き、分断された路線のままとなってしまう。全体像がまったく見えなくなってしまった西九州ルートの現状は、一刻も早く方向性を見出すことが求められている。

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