ゴーンが「虚偽記載」で逮捕された本当の意味

司法取引も絡めた立件で狙う本丸はどこに

言うまでもないことだが、有価証券報告書は、代表取締役2人で作成できるようなものではない。財務や経理担当の役職員や、監査役・監査法人などその他多くの関係者の作業を経て作成されるものである。日産自動車ほどの大企業となれば、その数は少なくとも数十人には及ぶであろう。

したがって、被疑者2人以外にも、過少申告の事実を知りながら作成に協力したものが存在する可能性が高い。その場合、関与者も関与の度合いによっては、共犯関係にあると言えるであろうし、また、取締役や監査役については会社法上の善管注意義務違反について、株主などから訴訟を提起され、会社に対して損害賠償を求められる可能性は十分にある。

司法取引でも民事責任は免れない

逮捕の翌朝から、各メディアは一斉に今回の事件について会社が司法取引を適用して捜査に協力したと報じた。

いわゆる「日本版・司法取引」は、正式名称を「協議・合意制度」といい、2016年に刑事訴訟法を改正することで導入され、今年6月に施行されたばかりの新しい制度である。

この制度は、特定犯罪の他人の犯罪事実について、被疑者・被告人が真実の供述をするなどの協力を行うことと引き換えに、検察官が処分・訴追などでの減免をする内容の協議を行い、両者で合意するというものである(刑事訴訟法350条の2)。合意が成立した場合、協力者である被疑者・被告人は協力する義務を負い、検察官は処分・訴追について減免する義務を負う。今年7月には、三菱日立パワーシステムズの元取締役などが行ったタイの公務員への贈賄事件につき、司法取引を初適用して同社については不起訴としている。

日本で導入された司法取引は、自分ではなく、他人の捜査や公判に協力する見返りに、刑の減免を受けるものであり、「捜査公判協力型」といわれる。海外、たとえばアメリカやドイツなどにおいては、自分の罪を認める見返りに刑の減免を受ける「自己負罪型」の司法取引も併せて採用している国もある。

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