台湾脱線車両「設計ミス」、海外で相次ぐ失態 鉄道メーカー大手各社、揺らぐ安全神話

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最近になって、車両製造時の不備による車両トラブルが頻発している。2017年12月11日に起きた新幹線「のぞみ34号」の台車亀裂トラブルは、車両を製造した川崎重工業の製造ミスが原因だった。

日立製作所は今年10月16日夜、イギリス向け高速列車「クラス802」が現地での試験走行時に架線を引っかけて切断し、翌日の運行ダイヤが大混乱をきたした。くしくも昨年の同じ10月16日にはやはり日立製の高速車両が、運転初日の一番列車で空調トラブルにより天井から水が流れ落ちるという失態を招いている。

国内では新規開業路線がほとんどなく、車両製造は更新需要くらいしか期待できない。どの車両メーカーも、今後の成長市場として海外に目を向けている。

しかし、「海外向けの車両製造はリスクが大きくて割に合わない」と、ある鉄道メーカーの幹部は指摘する。日本とは安全基準が異なるため車両開発費がかさむ。日本向け車両の知見が役に立たず当初見込みよりも作業工程が増える可能性がある。

現地生産の場合は鉄道技術に精通した作業員が不足している、そして為替リスクも忘れてはいけない。計画どおり完成すれば利益を得られるが、少しでもリスクが露呈するとすぐに赤字案件になるという。

川重は最終赤字に転落

川崎重工業は10月30日に発表した2018年第2四半期の決算で最終赤字に転落した。2019年3月期の連結純利益業績見通しも当初予想を160億円下回る310億円となった。その原因は川重が得意とするはずの北米向けの鉄道車両。ワシントンDCの地下鉄車両では配線の施工不良が発生し、改修費用などで当初計画から営業利益が50億円悪化。ロングアイランド鉄道向け車両では資材費の増加などで同じく営業利益が85億円悪化している。

同社では社長をトップとする「車両事業再建委員会」を設置して再建に取り組むが、事業撤退も視野に入れているという。

日車は2016年に総額3.5億ドルというアメリカ向け大型鉄道案件が車両強度テストをクリアできず、期限までに車両を納めることができなかった。このため多額の違約金を支払うとともに、鳴り物入りで開設したイリノイ州の工場が閉鎖に追い込まれている。

川重も日車も海外展開の歴史は古い。最近になってトラブルが頻発している理由について、「以前とは違う車両製造にチャレンジしたことが、結果的にはこうした結果を招いた」(日車)としている。

これ以上、トラブルが続けば日本製車両の「安全神話」が揺らぎかねない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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