爆笑問題「不謹慎ギリギリな笑いを狙う理由」 太田光が語る「芸人の果たすべき役割」
――お二人の時事漫才を活字にしたものが初めて書籍としてリリースされたのは『時事漫才 爆笑問題の日本原論』(以下、『時事漫才』)です。この1冊目に収録されている内容をいま振り返ってみると、阪神大震災や一連のオウム事件など、歴史に残るような大きな事件が多かったですね。そういう時期には時事漫才をやりやすいのか、やりづらいのか、どちらだったんでしょうか?
太田:テレビとライブでは全然違うね。テレビでは一切できなかったからね。当時連載していたのが『宝島30』という、割と「何でもあり」の雑誌だったので。何でも書いていいってことだったから成立したのかなって。
田中:北朝鮮問題もあったからね。金正日……じゃなくて当時は金日成か。あれがいちばん、ありえなかった。テレビで「北朝鮮」っていう言葉すら言っちゃいけない時代だったから。「朝鮮民主主義人民共和国」って言わなきゃいけなかった。
太田:あの年(1995年)はとにかく地震とオウム一色で。ライブも年間通じて毎月それだったね。ほかのネタがウケないんだもん。誰かが結婚した、っていう話をしても全然ダメ。テンションが下がるっていうか。
田中:インパクトがまるで違うから。ほかの出来事を何も覚えてないですからね。それが強すぎちゃって。
世の中の話題がほぼ「文春砲」だった
――最新刊の『時事漫才』に収録されているのは2015年5月から2018年9月までの雑誌連載なんですが、この時期はどんな時代だったと思いますか?
田中:この時期はベッキーとかSMAPから始まる一連の芸能ニュースが強くて。ネタにもあるように、次から次へと千本ノックみたいにやってくるんじゃねえよ、こっちはまだ消化しきれてないよ、っていう感じでした。世の中の話題がほぼ「文春砲」でしたよね。
太田:ベッキークラスのニュースになると触れずには済まされないところがある。客席も読者も「爆笑問題はどういじるだろう」というふうに見ているだろうし。
――次から次へと大きいニュースがあると、ネタを作りやすいものなんでしょうか。
太田:まあ、みんなが知っているニュースはいちばん作りやすいとは思うんだけど。ただ、たとえば「ベッキー」と「ゲス不倫」っていうワードを使うとしたら、単純なボケでは許してくれないだろうな、っていうのがあって。
田中:みんながやっちゃうからね。ネタとしてじゃなくても、会話の中とか、ネットとかで。
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