中国とインド、金融政策での苦闘続く 市場は時に乱高下、混乱も

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11月15日、中国とインドの中央銀行はことし、大胆な金融政策を試みており、いずれその成功が称賛される日がくるだろう。ただ、現時点で得られた成果は市場の大幅な変動以外にほとんどない。写真はムンバイにあるインド準備銀行(RBI)で7月30日撮影(2013年 ロイター/Vivek Prakash)

[シンガポール 15日 ロイター] -中国とインドの中央銀行はことし、大胆な金融政策を試みており、いずれその成功が称賛される日がくるだろう。ただ、現時点で得られた成果は市場の大幅な変動以外にほとんどない。

両中銀はマネーサプライをコントロールする上で、伝統的な預金準備率や政策金利より精度の高い金融政策である短期金利の誘導を狙っている。

中国人民銀行とインド準備銀行(RBI)は、政策金利や銀行準備預金といった昔ながらの政策に固執していると、景気全般や減速傾向の経済成長率により大きな影響を及ぼす可能性があると懸念し、それを避けたがっている。

HSBC(香港)経済調査部の共同ヘッド、フレデリック・ニューマン氏は「両中銀は金利ベースのシステムに移行しつつあり、その点は評価すべきだ」と指摘する。

人民銀行とRBIはともに金融市場の自由化を指向しているが、非常に異なる状況と異なる理由で似たような政策を採用している。人民銀行は公開市場オペを現在、もっぱらと言っていいほど信用の膨張抑制に利用している。人民銀行は利上げや預金準備率の引き上げが、経済成長への影響はさておき望ましくない通貨高を煽る結果につながると懸念している。

インドも同様、ここ数年間低迷しているGDP成長率への影響を懸念している。ただ、中国との違いは8月に史上最安値に下落したルピー相場を底上げし、急速なインフレ率の上昇を抑制することが急務だった点だ。

エコノミストたちはこうした政策に判断を下すのは時期尚早と感じており、新興国市場が難しい課題に直面している今年、両国が市場本位の価格形成に努めていることに感銘を受けている。

両国の実験は、当局が経済に対して握る支配力の一部を放棄し、市場の役割をさらに高めようとする試みでもある。

それでも、中所得国である中国やインドは新興国の中では超一流だが、欧米諸国ほど発展しておらず、ぴったり当てはまる政策のひな形が見当たらないのが実情だ。

1990年代後半に金融システムと為替相場の自由化を進めた韓国の試みは、相次ぐ政策の失敗と経営破たんや金融危機を招いた。

ことしまでの中国とインドは、預金準備率や貸出割り当て、投資規制などの定量的な方策によって、自由な資本移動と独立した金融政策、固定為替相場制度の3つを同時に実現できないとする典型的な「国際金融のトリレンマ」に立ち向かってきた。

新しい政策手段と古い本能

両国は市場志向型の政策手段を数多く導入しているが、政策の組み合わせは依然として管理に偏っている。

ウエストパック銀行のエコノミスト、ヒュー・マッケイ氏は「まだ非常にハイブリッド(混成)の体制だ」指摘する。

長期の見通しがどうあれ、これらの政策は短期的に極度の大きなボラティリティと不確実性を生み出した。市場の役割を高めることの対価としては大きい。

前述のニューマン氏は「透明性に関して問題が生じ、どれが政策目標なのかが不明確になっている」と語った。

インドは、通貨ルピーが8月に20%下落し史上最安値を付ける中、通常の政策金利と緊急時の融資金利であるMSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)レートとの幅を一時広げていた。

中国でも人民銀行がリバース・レポ金利という新たな政策手段を用い、6月に約3週間にわたって貸し出しを控えた結果、指標となる7日物のレポ金利が3倍の11%に上昇。その後9月と10月にも金利が高騰する場面があった。

この余波はオーストラリア市場にも及んだほか、外国人投資家の参入を制限している上海A株指数<.CSI300>は6月に20%下落した。

中国は年7%以上の成長を維持したい考えだが、過剰投資と製造業の設備過剰や不動産価格の高騰を招いた過去5年間の行き過ぎた融資の規模縮小も進めている。

人民銀行はいつ資金供給を実施するのかを市場に明らかにしておらず、大きな不確実性が生まれている。

INGのアジア部門のチーフエコノミスト、ティム・コンドン氏は「ボラティリティの拡大はすべて自らが招いた事態だ。明らかに彼らは直接的な介入で短期金利の流動性をコントロールできるが、やり方が非常にお粗末だった。金利急騰は余計だった」とみている。

ボラティリティの高まりは、中央政府による計画経済の下、他の経済の主要な部分は政府が固くコントロールする一方で、短期金融市場の急速な自由化だけを進めた結果でもあるかもしれない。中国には価格変動を和らげる厚みのある債券市場や短期金融市場が育っていないが、値幅制限があり兌換通貨ではない人民元相場の下で、ホットマネーの流入にも対処しなければならない。

ファースト・キャピタル・セキュリティーズのWangHaoyuエコノミストは「中国では計画経済のために地方政府が全く金利に無神経な状態が何十年も続いていたため、量的管理が明らかに最も有効な金融政策の手段だった」と述べた。

押しと引き

これに対しインドのボラティリティの高まりは頻繁に生じる衝動的な政策のブレに起因する。

前出のニューマン氏は「金利の大幅な変動が両国の経済成長にとってマイナスなのは確かだ。計画的な政策判断はさらに困難になる」とみている。

中国と異なり、インドには比較的に懐の深い短期金融市場があり、しっかりしたデリバティブ取引が行われている。ただ、ことしは短期金利が9%という幅で揺れ動いた。

インドの株式市場はRBIのラジャン総裁がルピー相場安定に向けた対策を打ち出したことで、史上最高値を記録した。

それでも企業投資が痛手を負って成長率見通しは一段と弱まっており、市場は中銀の政策上の優先課題が為替、経済成長、物価のうちいずれかを先読みしなければならなくなった。

国際通貨基金(IMF)のエコノミストの経験もあるラジャン総裁だが、為替相場の火消しに走る一方でインドの短期金融市場の高度化を進めようとしたのはタイミングを間違ったと言えるかもしれない。

彼の試みは、翌日物金利を複数構造とすることで銀行が短期資金の調達を控えることを狙ったものだったが、どの指標に従えばいいのか、あるいは政策の方向性はどちらに向かっているかをめぐって市場は困惑した。

両国の中銀は新たな政策を採用しようと急ハンドルを切りすぎたのかもしれないとエコノミストたちはみている。

ニューマン氏は「おそらく移行期の中銀においては、昔ながらの政策と市場本位の新しい政策手段の双方を同時に活用しなければならず、短期金融市場と資本市場の厚みを増すために一段の努力を傾けなければならない。だが、後戻りはできない。自然な流れを突然止めることになるからだ」と話している。

(Vidya Ranganathan記者)

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