技術過信、国内依存が蝕む転換期の日の丸IT産業

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ガラパゴス化と「開国」 携帯電話業界の苦悩

10月下旬、都内で開かれたKDDIの新製品発表会。3・5インチ大型サイズの液晶搭載モデルや8・1メガバイトのカメラ付きモデルなど7機種がauのラインナップに加わった。

MNP(番号ポータビリティ)開始から2年が経過し、今後は2年契約が完了するユーザーが増えてくる。高橋誠・取締役執行役員常務は「万人に受け入れられる携帯が増えていたが、冬モデルはデザインやサービスとの連携に注力し、auらしくこだわりを持って個性的な端末を増やした」と下期の挽回を狙う。

ガラパゴス化の典型といわれる携帯電話業界。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった通信キャリアが業界の頂点に立ち、端末メーカーからコンテンツ業界、販売代理店まで牛耳る。こうした「垂直統合型ビジネス」により、日本は世界にもまれなモバイル先進国となり、独自の市場を築いてきた。

だが、その国内市場に異変が起きている。きっかけは昨秋以降、最大手ドコモが導入し普及が進んだ新販売方式だ。端末価格が高く、通話料金が安い料金体系に移行したため、携帯は高額品になり、買い替え需要にブレーキがかかった。今年度上期の携帯販売台数は2~3割の大幅なマイナス。市場の成熟化に拍車をかけ、もはや高機能だけで消費者を呼び込むことは難しくなっている。

その影響をじかに受けるのは端末メーカーだ。契約者数を確保していれば安定的なストック収入が入る通信キャリアと異なり、メーカーや販売代理店は販売台数減が直撃する。たまりかねた端末メーカーは、こぞって海外戦略を加速し始めた。

「(10年度以降に)携帯でも海外に打って出る」。パナソニックの大坪文雄社長は10月下旬の業績発表会見で、かつて撤退した海外市場に再参入する方針を示した。今春、中国で携帯事業に乗り出したシャープの幹部も「2~3年中に海外売上比率を半分にする」と語る。

通信キャリアもその背中を押す。NTTドコモでは、端末プラットフォームのグローバル共通化を推進すると表明。同時に、ドコモの独自ソフトウエアに対応するオペレータパックの開発を進めている。汎用の携帯端末にこのパックを搭載すれば、iモードやお財布ケータイなどドコモのサービスを利用できるようになる。ガチガチの垂直統合から“オープン化”への大きな一歩。来年度後半の完成を目指しており、これによりメーカーの開発効率が向上し、国内メーカーは海外に出やすくなる。

しかしそれは逆に、海外メーカーもドコモ端末を作りやすくなることを意味する。こうした動きは海外進出の好機であると同時に、国内業界を守る参入障壁の決壊でもある。「海外進出どころか、日本でも淘汰されうる時代になる」。端末メーカー関係者はそうささやく。

携帯電話はもはや特殊なデバイスではない

すでに世界には、圧倒的なシェアとコスト競争力に秀でたノキアが君臨し、サムスンもいる。さらに見渡せば、マイクロソフトやアップル、グーグルなど、これまでPCを主軸に置いていたネット業界やIT業界の巨大企業が、携帯やスマートフォンなど、モバイル市場に着々と軸足を移している。中でもグーグルがモバイル向けプラットフォームOS「アンドロイド」で参入したことは、業界に大きな衝撃を与えた。

携帯は機能的に見てもPCに近づき、特殊なデバイスではなくなりつつある。通信キャリアにしてみても、オープンプラットフォームで多様性のある端末を提供していくのは開発コスト低減につながるだけでなく、多種多様な顧客ニーズに応えるためにも不可欠である。今後は垂直統合モデルのような絶対的な成功パターンはなくなり、メーカー、通信キャリアが共に自立を求められる。

円高に原料高、海外企業との競争--。電機・IT産業の展望は当面厳しく、合従連衡の動きも加速しそうだ。パナソニックと三洋電機の統合が実現し「11兆円企業」が誕生すれば、さらなる業界再編の呼び水になることは間違いない。

10月に経営統合したJVC・ケンウッド・ホールディングス。前田悟・新事業開発センター長は「ハードの売り切り型ではない、AV機器と通信サービスを絡めたビジネスモデル」を新事業と位置づける。同社は、海外のITベンチャー企業や通信事業者を巻き込んだ事業育成に乗り出した。発想と収益構造の転換なしには生き残れない時代がやってくる。

(週刊東洋経済)

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