スポ根全開!金足農業はかつて「雪」で鍛えた 甲子園に挑んだ8人の監督たちの物語

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今から30年以上前、積雪地帯は半年はまともに練習が出来ないことが不利な点としてあげられていたが、著者の指摘に対し、嶋崎は「その言葉は嘘です」と一蹴。「どんどん降れと思っていましたよ」とふり返る。

『甲子園に挑んだ監督たち』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

降雪期は、ランニングするにしても、雪が積もると入れた足を抜くのに力が必要で鍛錬になったとか。他にも、足を使わないスキー、部員が他の部員を背負って雪の斜面をのぼる練習、搬送車が絶えない雪上合宿など、『巨人の星』も真っ青のスポ根全開の練習内容を示す。

もちろん、これらの練習メニューは過去のものだが、現監督はこの教えを受けた一人。今回の甲子園で金足農業に興味を持った人は、形は変われど脈々と流れる金足魂を感じられるので一読をすすめる。

日本文理高校総監督・大井道夫の甲子園出場までの道のりはドラマチックだ。自らも甲子園準優勝投手の大井は大学、社会人で野球を続けたが 三顧の礼で招かれたものの、いざ就任してみたら、招聘してくれた理事長がまさかのトンズラ。他の学校関係者の誰もが野球部の監督が大井にかわることなど知らない状態に。全ての約束が反故にされながらも、石拾いから始め、甲子園出場を果たす。

夢に溢れたストーリーだが、大井が生活に不自由しない料亭の二代目経営者だったから可能だった一面もしっかり映す。

高校野球を題材に取り上げた理由

著者が高校野球を題材に取り上げた理由は至極シンプルだ。仕事人間で、野球をやるのと観戦するのが唯一の趣味だからと語る。社会的な意味や、金銭的な欲望はない。

純粋に好きだから、スポーツ取材とは距離を置いていた著者だから、野球村のルールを忖度せずに、質問している場面も見受けられ、本書に厚みを持たしている。

読み始める前は監督のマイナーさが気になったが、「最近の保護者はすぐに文句を言ってくる!」など老監督たちの炎上必至な文言も散りばめられていて、いつのまにか引き込まれる。スポーツノンフィクションというよりは、高校野球の監督という近そうで遠い職業の素顔がわかる内容になっている。

栗下 直也 HONZ

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くりした なおや

1980年生まれ、東京都出身。大学院修了後、半年間の無職生活を経て、産業専門紙に記者職で拾われる。現在は電機業界を担当。HONZでは新橋ガード下系サラリーマン担当を自認する。紹介する本は社会科学系、人文系、ルポ、お酒の本が中心。

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