セブンの将来を握る「ネットコンビニ」の正体 専用の配送会社使ったECでアマゾンに対抗

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

セブンとは対照的に、EC事業における配送のラストワンマイルから距離を置いているのがローソンだ。

2018年8月末で食品を中心とした定期宅配EC「ローソンフレッシュ」を閉鎖する。もともとは2013年1月からヤフーとの合弁会社(出資比率はローソン51%、ヤフー49%)を通じ「スマートキッチン」として運営していたが、ポイント施策の運営方針などをめぐり2013年11月に合弁を解消、その後2014年7月からローソンフレッシュとして再スタートしていた。

閉鎖の理由について、ローソンのラストワンマイル事業本部長兼デジタルコマース商品部長の中村雄一郎氏は「会員や売上高の伸びが今ひとつだったことに加え、日本郵便やヤマト運輸に委託している配送料の値上げが痛かった」と説明する。

一方で注力するのは、2018年3月に始めた生鮮食品を店舗で受け取る「ローソン フレッシュ ピック(通称ロピック)」だ。生鮮品、日配食品(毎日店舗に配送される食品)、調味料、ミールキットなど約600種類の商品から、ネットで当日8時までに注文すると、最短で当日15時以降に指定の店舗で受け取ることができる。こちらは三菱食品やケー・シー・エスといった既存の物流網を使っているため、余分な配送料がかからない。現在は東京都と神奈川県の一部店舗(約200店舗)での展開だが、今後対象エリアを拡大していく計画だ。

ローソン、ファミマもEC事業は苦戦

ローソンはほかにも、2015年6月から佐川急便の親会社・SGホールディングスとの合弁会社(出資比率はローソン51%、SGホールディングス49%)を通じ、専任配送担当者が商品を届ける「SGローソン マチの暮らしサポート」を展開しているが、現段階の導入店舗は20弱にとどまる。専任配送担当者が水回りのトラブルや鍵の交換なども手掛ける幅広いサービスだが、「配送員が中々集まらない」(中村氏)という。注文方法が対面か電話に限られることも拡大のネックになっていると見られる。

ファミリーマートに関しては2000年から始めた「famima.com(ファミマドットコム」を2018年2月に閉鎖した。2018年5月から物流支援会社のスクロール360と連携し、外部のEC事業者向けにファミマ店舗で消費者が商品を受け取れるコンビニ受け取りサービス「コトリ」が始まっているが、自社のEC事業については「(親会社の)ユニー・ファミリーマートホールディングスとしての方向性を出すべく考えている。2018年中に方向性を出す」(広報室)という状況だ。

そんな中、今後セブンが期待をかけるネットコンビニの展開を拡大していくうえで課題となるのは、配送を担うハーティストの採用だろう。物流業界のドライバー不足は深刻化しているが、ジーニーの河合社長は「軽貨物車なので、オートマチック限定の運転免許さえあれば誰でも運べる。勤務シフトも柔軟に組めるので、その魅力を伝えていきたい」と語る。

コンビニを中核とするセブン&アイ・ホールディングスとしても、ネットコンビニの成否は戦略上極めて重要だ。2017年度、同社はグループ統合型のECサイト「オムニセブン」で234億円の減損特損を計上した。リアル店舗では業界を独走していても、ネットではアマゾンの足元にも及ばない。2万店以上あるリアル店舗の強みを生かしつつ、専用の配送会社を使いどこまで戦えるか。長らく試行錯誤が続いているセブンのEC戦略は、このネットコンビニの行方にかかっている。

『週刊東洋経済』2018年8月25日号(8月20日発売)の特集は「物流危機は終わらない」です。
常盤 有未 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事