セブンの将来を握る「ネットコンビニ」の正体 専用の配送会社使ったECでアマゾンに対抗

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商品の配送を担うのはセイノーホールディングス(HD)の子会社、GENie(ジーニー)だ。セブン向け専用に作られた同社には「ハーティスト」と呼ばれるセブン専属の配送員が約100人おり、全員がセブンの制服を着て、セブンのロゴが入った専用車で配送する。利用者から見ると、まるでセブンの店員が家まで商品を運んできてくれるように見える。

ハーティストはおよそ5店に1人配置されており、店の駐車場などで待機している。注文が入ると店で商品を受け取り、自宅や事業所など指定された場所に届ける。「女性が約7割を占めており、子育てが落ち着いた30〜40代の主婦が多い」(ジーニーの河合秀治社長)という。北海道での時給は試用期間を除き950円からだ。

セブンとセイノーHDが手を組んだきっかけは、総菜配達サービス「セブンミール」の配送を外部委託する実験だった。

2000年に始まったセブンミールは、セブンにはない健康志向の弁当なども取りそろえているのが特長だ。配達方法は店員がみずから運ぶかヤマト運輸に委託するかの2通りだが、店員に配送を任せる形を基本としてサービスはスタートした。ところが店員は店内作業に時間を取られ、配送までは手が回らないという問題が生じていた。

店員がみずから運ぶより圧倒的に安い

そこで2014年8月、セブンはセブンミールの配送をセイノーHDに任せた。セブンの新居義典デジタル戦略部統括マネジャーは「(ネットコンビニを含め)店員がみずから運ぶより配送費は圧倒的に安い。大手配送会社に委託するよりもコストはかからない」と説明する。

この取り組みは広島県の一部店舗から始まり、現在は1都7県の250店程度で展開している。2016年7月には、セブン専用の配送子会社としてジーニーが誕生し、2017年4月にはサービス拡大に向けた業務提携を結んだ。 セブンミールの実験では「セブンの店内商品も届けてほしいという利用者の声が増えていた」(新居氏)。それが今のネットコンビニ事業につながった。

加盟店によるネットコンビニの評価はまずまずだ。札幌発寒4条店の白倉康宏オーナーは「平均して1日3件程度注文があり、客単価は2000円程度。1000円以上から注文できるのでネットスーパーより注文しやすいという声を聞く。利用者は配送料(基本的に税込み216円)をそれほど気にしていないようだ」と話す。

加盟店にとって、ネットコンビニは売り上げ拡大にもつながる。「配送の希望時間帯は夜が多く、主婦や働く女性によく使われている」(白倉オーナー)。7月末時点でネットコンビニを展開する店は札幌・小樽地区を中心に100店になった。2019年8月までには北海道約1000店に拡大し、2019年9月以降、全国の加盟店にも参画を推奨していく。

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