北朝鮮は隣国の韓国をもっと信頼すべきである−−韓昇洙・韓国首相

北朝鮮の非核化は大きな利益をもたらす

韓国と北朝鮮の関係は徐々に拡大し始めている。しかし、この拡大は両国関係の根源的な変化をもたらすには至っていない。今年７月の金剛山事件は両国の関係がいかに脆弱であるかを示した。韓国人の女性観光客が海岸を散歩中に観光ゾーンの境界を無意識に越えて銃撃され、死亡した事件である。両国間ではこの事件を調査し、再発を防止するための対話は行われていない。こうした事態に対して韓国では北朝鮮に対して政策の変更を求める声が高まっている。いずれにせよ両国関係は国際社会が尊重すべき原則と基準に合致すべきであると信じている。

もう一つの重要な事柄は朝鮮半島に永続的な平和を構築することだ。これは単にお互いに敵愾心（てきがいしん）がなくなる状況という意味ではない。事件が起こったからといって簡単に崩れたりすることがなく、北朝鮮の核開発計画によって引き起こされている政治的・軍事的な危機を阻止できるような永続的な平和である。こうした平和を現実する唯一の道は、北朝鮮を非核化し、朝鮮半島に平和体制を構築することだ。

現在、６カ国協議は、北朝鮮の将来を切り開く基本的な枠組みとなっている。北朝鮮が核開発計画を放棄するなら、多くの利益がもたらされるだろう。北朝鮮と近隣諸国の関係は改善し、北東アジアの平和と安全保障メカニズムを構築する可能性が高まるだろう。幸いにも米国が北朝鮮をテロ支援国リストから除外したことで、非核化のプロセスが再開した。しかし、北朝鮮が核施設での作業を再開すると脅しをかけるようなことをすれば、このプロセスは中断するだろう。

さらに韓国の新政権が今年の初めに誕生して以来、両国関係はまったく進展を見せていない。しかし、わが国の考え方は、北朝鮮の問題を解決するために道を開き、北朝鮮に輝く未来を約束するだけでなく、朝鮮半島を北東アジアの平和と繁栄の入り口にすることである。

北朝鮮の指導者は、韓国を包囲するか、出し抜くことができると誤った考えを持っているのかもしれない。すなわち米韓の間にくさびを打ち込む戦略である。しかし、韓国は北朝鮮が最も信頼できる隣国なのである。北朝鮮はこうした現実を認識し、賢明な選択をすべきである。

ハン・スンス
１９３６年生まれ。ソウル大学および英ヨーク大学大学院で修士・博士課程修了。８８年に国会議員初当選。盧泰愚政権下で商工相、金泳三政権では駐米大使、副首相兼財政経済相、金大中政権で外交通商相などを歴任。２００８年李明博政権で首相に就任。