6歳を炎天下で走らせる、少年スポーツの実情 協会から通達が出ても、現場の大人たちは…

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高校サッカーも酷暑対策が練られる。クラブ王者を決める日本クラブユース選手権大会は29日までに群馬県前橋市で行われ、準決勝まで開催した。

関西サッカークラブユース連盟会長の宮川淑人さんによると、予選リーグを80分から70分にするなど急きょ試合時間を短縮したそうだ。

「これから温暖化も進むし、暑さはますます尋常ではなくなるはず。真夏の大会について対応策を議論しているが、15分ハーフでやるとどうかといった案も出ている。高校生に15分ハーフなんて冗談でしょと思うだろうが、真剣に考えている」と宮川さんは話す。熱中症に関する指導者の知識も個人差があるため、勉強会の必要性も感じているという。

引率する大人も熱中症にかかっている

熱中症に関する知識不足は、少年スポーツを引率する大人たちをも危険にさらしている。都内、別のチームで少年野球にかかわる50代の母親は「自分の周囲では子どもが倒れたとは聞かないが、不摂生している大人がよく熱中症になる」と話す。

週末に残業したり、痛飲し、寝不足の体を引きずってグラウンドへ。炎天下で指導するのは体にこたえる。共働きが多いので、母親も同様だ。練習当番のお母さんが救急搬送されたこともある。

その母親の長男は数年前の8月、アメリカで行われた中学生の軟式野球大会に参加した。

試合はすべてナイターだった。暑いときにスポーツをやるのはクレージーだと言われたそうです。日本の甲子園なんて、アメリカの人には信じられないでしょう」

真夏のスポーツをどうとらえるか。思考転換するときが来ているようだ。

 

(次回記事では、アスリートの熱中症ケア『災害酷暑の乗り切りかた』について取り上げます)

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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