不謹慎?ハワイ「噴火ツアー」ブームの現実 地元住民は複雑な表情
溶岩観光ツアーは、以前からハワイ島にあった。
キラウエア山は、1983年以降ほぼ継続的に噴火が続いており、新たな溶岩流が海へと流れ出すたびに、観光客の数は急増してきた。現在の噴火は、記録に残る中ではもっとも大規模で長期に渡るものだ。
ハワイ州観光局によると、ハワイ島を観光で訪れる人は、5月は数隻のクルーズ船が島の主要都市であるヒロやコナへの寄港を見合わせたこともあり、前年同月比1.6%減となった。
だが観光客が島で使う金額は増え、同3・3%増の約1億7390万ドル(約195億円)だった。6月の統計はまだ発表されていない。
船で行く溶岩ツアーの料金は1人当たり220ドル程度で、ターピンさんのほかに少なくとも2業者がツアーを運行している。ヘリコプターによるツアーの運営会社は6社で、1人当たりの料金は300ドル程度だ。
地元住民は複雑な気持ち
レイラニ・エステーツやカポホ・バケーションランドなど、数百軒の住宅が焼失した地域の上空を騒々しいツアーのヘリコプターが飛ぶことについて、地元住民は複雑な気持ちを抱いている。
「ヘリは早い日は朝6時から飛び始めて、1日中飛んでいる」と、ゲストハウスを経営するロブ・ガズマンさん(47)は言う。一時は避難生活を送ったガズマンさんだが、最近になって道路が通れるようになったためカラパナの自宅に戻ったという。
「同時に、あれが大打撃を受けた地域経済にお金を落としている」と、ガズマンさんは付け加えた。
ヘリに乗った観光客は、高さ55メートルまで吹き上がる溶岩や、「亀裂8」から海に向かって流れる13キロに及ぶ溶岩流のほか、650軒を超える民家の焼け跡が点在する荒野を目にすることになる。
シアトルから来た観光客スティーブ・ガフィンさんは、どうしてもこのツアーに参加したかったという。
「家を失った人たちのことは大変気の毒だと思う。でも、この機会を逃す手はない。非常にエキサイティングだ」。妻と一緒に噴火を見学する予定のガフィンさんはそう語った。
溶岩を見るには、ヘリか船しかない。溶岩観光のハイキングツアーはすべて中止になったほか、キラウエア山があるハワイ火山国立公園は一般の立ち入りが禁止された。地元住民を含めた80人以上の人が、溶岩地域に無断で立ち入ったとして、最大5000ドルの罰金又は懲役1年の判決を受けている。
避難生活を送る住民の中には、ツアー料金を支払う余裕がなく、自宅を破壊したり、避難を強いた溶岩流の様子を見に行けない人たちもいる。そうした人たちは、自警団の同伴で定期的に自宅を見に戻ることが許されている。
「溶岩を見るのは権利でもあるし、災害を受け止めるプロセスの一環でもある」と、カラパナ地区の住民会長ハーゼン・コムラウスさんは言う。多くの地元住民のように、コムラウスさんも、溶岩を見渡せる観察地点の整備を望んでいる。
こうした地元住民の要望を踏まえ、ヘリによるツアー会社の1つは、溶岩観光ツアーに空席が出た場合は無料で避難住民を乗せると表明。自宅などの様子を上空から確認したい避難住民には、チャーターヘリを割引価格で提供している。
「これまでに数十人の避難住民を乗せており、まだ数十人が順番待ちしている」と、パラダイス・ヘリコプターズのカル・ドーン最高経営責任者(CEO)は説明。ヘリツアーを利用する観光客1人当たり最大20ドルを被災者救援に寄付していると話した。
(Jolyn Rosa 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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