四季島・瑞風のノウハウは夜行列車に使える 「クルーズトレイン」乗ってわかった新事実

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瑞風の場合、駅での停車中は騒音がホームの屋根に反響しているのか、先頭車の展望室にいるとエンジン音が気になった。正直、「通路と展望室の間に仕切り扉が欲しい」と思った。だが走行が始まると、エンジン音などは気にならないレベルにまで下がった。

寝台夜行列車を復活させるうえで、食堂車は不可欠なサービスである。東西の両クルーズトレインは、特徴のあるサービスを実施している。

四季島の場合、従来の日本レストランエンタプライズから、日本ホテルに担当の業者を変えるだけでなく、地元の有名レストランのシェフが乗り込み、料理を作るだけでなく、メインデッシュが提供されるときは、テーブルの傍まで来る。そしてお客様へのあいさつと料理の感想を聞いて回っていた。

瑞風は、継続してJR西日本フードサービスネットが調理を担当するが、有名シェフが料理を監修している。それ以外に、テーブルにIHクッキングヒーターを設置して、食堂車で鍋料理を提供している。2日目のランチ時は、IHクッキングヒーターで加温したポトフを、各部屋まで届けるなど、新機軸のサービスを実施している。

定期の寝台夜行列車を復活させるには、食堂車のメニューやサービスも重要になるため、参考になる事例と言える。

寝台夜行列車の復活のカギは、JR西日本が握る

JR西日本は、瑞風の価格などの概要が発表された際、117系電車を改造した長距離電車の構想も発表した。117系電車を改造した長距離電車は、グリーン個室や開放型グリーン車、普通車個室、ノビノビ座席、普通座席車と5つのグレードの異なる設備を有する計画である。

かつてのトワイライトエクスプレスを思わせる瑞風の客室(撮影:尾形文繁)

開放型グリーン車は、開放型A寝台車のような感じで、昼間はゆったりしたソファー型の座席、夜は幅の広い寝台になる。普通車個室は、夜はマットを敷いた状態で寝ることができる設備であり、ノビノビ座席は開放型B寝台車のような設備となる。昼間に座席として使用することを考慮しているためだ。

瑞風では大阪・京都―下関間に、山陽本線上り・下り片道、山陰本線上り・下り片道という販売方法を採用したことから、もし乗車率が悪ければ一般的な寝台列車として販売するか、この列車をベースに定期の寝台夜行列車を設定する可能性もあると筆者は考えた。事実、大阪・京都から浜田・益田などの島根県西部から萩などの山口県の東部は、非常に行きづらい土地であり、寝台夜行列車が欲しい地域である。またJR西日本も、山陰本線を活性化させたいはずである。

JR西日本が、117系電車改造の長距離電車構想を打ち出したことから、瑞風の“ロイヤルツイン”“ロイヤルシングル”を、車内やサービスを簡素化したA個室寝台に、食堂車とロビーカー、そこへB個室寝台“シングル”“ツイン”以外に、ノビノビ座席を組み込んだ寝台夜行列車が、運行される可能性がある。

ただ、瑞風タイプの列車を定期列車として運行するには、加減速性と高速性を向上させるため、エンジン付きの車両の比率を高くせざるをえない。山陰本線の益田―下関間には、優等列車が皆無であるから、ノビノビ座席が設けられると利便性が向上する。

B個室寝台“シングル”“ツイン”は、2階が“シングル”、階下を“ツイン”と、2階建てにすれば、生産性が高まる。

グレードこそ異なるが、瑞風と117系電車改造の長距離電車は、セットで考える必要がある。JR西日本のこれら2つの列車が、今後の寝台夜行列車を復活させる上で、重要なヒントとなることは確かである。

堀内 重人 運輸評論家

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ほりうち しげと / Shigeto Horiuchi

1967年生まれ。立命館大学経営学研究科博士前期課程修了。運輸評論家として執筆や講演活動、ラジオ出演などを行う傍ら、NPOなどで交通問題を中心とした活動を行う。著書に『ビジネスのヒントは駅弁に詰まっている』(双葉新書)、『観光列車が旅を変えた: 地域を拓く鉄道チャレンジの軌跡』(交通新聞社新書)、『地域の足を支える コミュニティーバス・デマンド交通』(鹿島出版会)ほか。

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