四季島・瑞風のノウハウは夜行列車に使える 「クルーズトレイン」乗ってわかった新事実

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瑞風の場合、列車の遅延などに関係なく食事ができる利点がある反面、地域活性化への貢献は四季島ほどではない。また、2日目の各自の部屋で食事を提供するサービスは、寝台夜行列車の復活を想定したサービスであると感じた。昼食にフレンチが提供されるうえ、15時頃にアフタヌーンティーも提供される。昼食で提供されたポトフの量が多く、他の客室では食べきれずに残している人も多かった。昼食の前に鳥取砂丘を歩くため、お腹が減ることを前提としたのだろう。

クラシカルな瑞風の食堂車(撮影:尾形文繁)

山陽コースでは、宮島口で駅弁を提供している「うえの」のあなごめしが、2日目の昼食として提供される。食べきれなかった人には、おにぎりにしてお持ち帰りできるようにしていると聞く。ポトフも、保温性が優れた発泡スチロールの容器に詰めて、持って帰れるようにすべきだと感じた。

四季島の朝食も同様だ。早朝に喜多方の街を散策してお腹がすいていることを考慮しているのか、デザートを含め9品も提供されたが、実際には量が多くて食べるだけで精一杯だった。

客室や展望ラウンジに関しては、豪華さでは四季島に軍配が上がる。天井も木でできており、組子なども使用されるなど、職人技が感じられた。また四季島の展望ラウンジの絨毯は、1m×2mのサイズで約40万円も要する極上品であり、ふんわり感があった。

瑞風の場合、通路側の壁が撤去できる構造となっている。客室から両方の景色を見ながら、食事が楽しめるよう、試行錯誤している様子がうかがえた。客室の壁などには木材を使用しているが、天井は従来の“スイート”“ロイヤル”の延長であり、メンテナンスのしやすさを重視した設計であった。

これは通路やデッキも同じであり、フローリング構造にはせず、絨毯敷きとすることで、製造コストだけでなく、メンテナンスコストも下げている。デッキの壁は木目調の化粧板として維持費の低減を図っていた。

寝台夜行列車を復活させるヒントになる

四季島や瑞風は、価格も非常に割高であるうえ、従来の定期寝台夜行列車のように、毎日運転される列車ではないため、利用するには会社などを休まざるをえないなどの制約がある。それゆえ参加者は、熟年夫婦が中心とならざるをえないのが実情であり、価格面も含めて庶民も利用可能な寝台夜行列車の復活を望む声があることは確かである。

ななつ星から始まったクルーズトレインの登場により、優れた乗り心地や防音性の良い優れた客室は、定期の寝台夜行列車の復活に活かすことができる。事実、従来の客車を使用した寝台夜行列車は、発車・停止時の衝撃や振動が大きく、かつ防音性も低かったため、車内で熟睡しづらい面は否めなかった。

この点に関しては、「サンライズ瀬戸・出雲」や「カシオペア」では、大きく改善されていた。それが四季島や瑞風になれば、サンライズやカシオペアをさらに上回る乗り心地の良さと、防音性の高さが売り物である。

四季島の客室。暖炉がある部屋もある(撮影:尾形文繁)

両列車とも動力分散方式を採用しているため、従来の機関車牽引の客車列車よりも、加減速性や高速性が高く、通勤列車のダイヤを痛めることなく運行が可能となった。

両列車の先頭車は、ホームに立っていると、物凄い騒音を発しているが、車内は静寂性が維持されている。特に四季島の場合、先頭の展望室にいれば騒音はまったく聞こえないと言っても過言ではない。

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