特急が4種類も走る「神戸高速線」は超複雑だ 赤・黄色で停車駅違い、地元民以外は理解不能

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なお、阪神は急行系の基本編成が6両のため、山陽との相互直通運転に支障はない。先ほども述べたとおり、阪神と山陽のダイヤパターンは異なるので、阪神の特急をすべて直通特急にするのは難しい。そのため、今後も梅田―須磨浦公園間の特急は運行されるだろう。

そうであるならば、せめて首都圏の私鉄のように神戸高速線の起点駅である元町駅で列車方向幕を「普通」に変え、神戸高速線内の駅電光掲示板も「普通」に統一すべきだ。なお、阪神線内は「直通特急」と「特急」は区別されるが、基本的に停車駅は変わらない(朝ラッシュ時に走る一部の直通特急が甲子園駅を通過する)。

神戸高速線には全国では見られない列車種別が存在する。山陽が運行する「S特急」もそのひとつだ。「S特急」は明石駅の高架化に伴い、山陽明石駅からJR明石駅への乗り換えが容易になった1991年にデビューした。「S特急」は「直通特急」よりも停車駅が多く、神戸高速線内では西元町駅以外の各駅に停車する。2018年6月現在、S特急は朝ラッシュ時、深夜帯のみの運行となっている。

さて、元町駅の駅電光掲示板を見ると「普通」だけでなく「山陽普通」なる種別を見つけた。「山陽普通」とは文字どおり山陽の車両によって運行される列車だ。山陽の普通列車は阪神神戸三宮駅・阪急神戸三宮駅まで乗り入れる。一方、阪神の普通列車は神戸高速線の高速神戸駅止まりだ。列車種別を見るだけで、神戸高速線から山陽線へ乗り入れることがわかるので、とても便利だ。ところで、同じく神戸高速線の起点駅である阪急神戸三宮駅の駅電光掲示板では「普通 山陽姫路」と表示される。このバラバラ感が関西私鉄らしいと言えるかもしれない。

阪急・神戸市営地下鉄相互直通運転で神戸高速も変わる?

今まで神戸高速線内の複雑な種別事情を見てきたが、ここしばらく、基本的な運転形態は変わらないだろう。

一方で、神戸高速線に大きな影響を与える大プロジェクトが少しずつ進行している。それが、阪急神戸線・神戸市営地下鉄相互直通運転プロジェクトだ。神戸市営地下鉄西神・山手線は新神戸と西神中央を結び、三宮―長田間は神戸高速線と並行して走っている。いわば、神戸市営地下鉄西神・山手線は神戸高速線の強力なライバルなのだ。

神戸市営地下鉄(写真:zero / PIXTA)

2017年11月24日付の神戸新聞NEXTによると、阪急から神戸市営地下鉄への接続駅として新神戸駅、三宮駅、長田駅・板宿駅が候補に挙がっているという。仮に長田駅・板宿駅が接続駅になると、神戸高速線に神戸市営地下鉄の車両が走ることは十分に考えられる。その際、運行形態はどうなるか、新たな種別が生まれるのか。種別好きの筆者にとって興味は尽きない。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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