特急が4種類も走る「神戸高速線」は超複雑だ 赤・黄色で停車駅違い、地元民以外は理解不能

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元町―西代間の停車駅(筆者作成)

2つの直通特急が存在する背景には直通特急が乗り入れる阪神と山陽のダイヤの違いがある。日中時間帯、阪神は10分間隔、山陽は15分間隔で運行される。この5分の差異を調整するために停車駅が多い黄色方向幕の直通特急を運行している。

1998年以前は阪急10分間隔、阪神12分間隔、山陽15分間隔で運行されていたので、高速神戸駅、新開地駅での長時間停車が頻繁にあった。その頃と比べると利便性は高まったが、神戸市民であっても「赤色の直通特急」と「黄色の直通特急」の違いを理解している利用者は少ないように思える。

確かに「黄色の直通特急」の方向幕の下には小さく「神戸三宮―板宿間は各駅停車」と書かれているが、京阪や南海のように種別を細分化したほうがわかりやすいはずだ。たとえば、「赤色の直通特急」は「直通快特」、「黄色の直通特急」は従来どおり「直通特急」とすれば、遠方の方でも理解しやすいだろう。

列車方向幕は「特急」なのに駅電光掲示板は「普通」?

阪神神戸高速線をさらに複雑にしているのが、30分間隔(昼間)で運行されている阪神梅田―(山陽)須磨浦公園間を結ぶ「特急」の存在だ。「特急」は阪神神戸三宮駅から須磨浦公園駅まで各駅に止まる。たが、列車方向幕や神戸高速線内の駅電光掲示板では「特急」と案内される。ただし、山陽線内の駅電光掲示板では「普通」(梅田方面は「特急」)と表示され、列車方向幕とは合致しない。

山陽電鉄の普通電車(写真:ブレービー100 / PIXTA)

元町駅から特急須磨浦公園行きに乗ると、方向幕と実情が異なるせいか、車掌の口から「特急」というワードは聞かれなかった。その代わり車掌は駅に止まるたびに次駅の停車駅を案内した。それでも、関東の友人からは「神戸高速線や山陽線で見た直通特急と特急は違うのですか」という質問を受けることがある。そもそも、なぜ阪神梅田―須磨浦公園間の特急が存在するのだろうか。これには神戸高速鉄道開業時の決まりごとが背景にある。神戸高速鉄道が開業した際に決められた事柄をまとめると以下のようになる。

1. 乗り入れ区間は山陽が阪神大石、阪急六甲まで、阪急・阪神が須磨浦公園まで
2. 特急が乗り入れる
3. 乗り入れ列車は神戸高速線内も含め、乗り入れ区間では各駅に止まる
4. 相手線内では相手社の特急には抜かれない

そのため、神戸高速鉄道の開業当初から阪神、阪急は梅田―須磨浦公園間に特急を運行してきた。1998年2月のダイヤ改正で、阪急は8両編成に統一するために須磨浦公園への乗り入れを中止した。

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