介護現場が2025年までに直面する重大な課題 人材育成を呼びかける若き経営者の危機感

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秋本:私たちは、カリスマ性を持ったリーダーがこの社会を変えていくというよりは、介護の問題は日々の生活の中で起きているので、問題に気づいた時に一歩踏み出せるように一人ひとりのリーダーシップを高めていくことが重要だなと考えています。今はまだ東京でしかできていないので、これを全国に広めたいなと思い、2025年に向けてこの機会に全国展開をするためのクラウドファンディングを始めました。

:なぜそもそも「2025年」なのでしょうか?

秋本:2025年は、団塊の世代の方たちが後期高齢者の75歳以上になると言われている年です(参考:今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~)。その時に、たとえば今のままだったら、人材は37万7000人不足すると言われているという現状があったり、最期を迎える場所がない看取り難民や介護離職の問題など、今ある課題が2025年にはさらに深刻になるというのが、私が学生の時から介護の領域では当たり前に言われていました〔出典:厚生労働省 2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について〕。今から私たちがどんなアクションをしてその年を迎えるかによって未来が変わってくるなと思い、2025年を1つの区切り、目標年数として活動を始めています。

:そうなると、介護士不足の問題もますます深刻になってきますね。

秋本:介護職員数は圧倒的に伸びているのですが、日本の高齢化のスピードが速すぎて追いついていません(出典:厚生労働省 介護労働の現状)。

介護現場でのアルバイト、祖父の認知症で見えた課題

:どうしてもメディアでは、介護の現場の過重労働や低賃金など、待遇面のことがよく言われます。実際にご自身の介護の現場での経験を振り返ってどうですか?

秋本:私は大学生の時に2年間だけ介護の現場でアルバイトをしていたのですが、介護の仕事は楽しくて、人の可能性に寄り添える仕事だなと感じました。一方で、課題もたくさん見つかりました。私が働いていた現場は、2年間で現場歴が上から2番目になったのですが、それくらい離職率がすごく高かったです。また、ご家族が介護を自宅ではできなくなって放置してしまったり、一部では虐待があったりする中で、課題意識は強くなっていきました。

:どういう状況で、介護の放棄や虐待が起きてしまうのでしょうか?

秋本:本当の意味で、虐待をしたくてした人は1人もいないんじゃないかなと思います。私がかかわっていたご家族さんも、もともとはものすごく思い入れが強くて、何でも1人で頑張ってしまう方でした。しかし、普段働きながらも家に帰ったら両親の介護をするという状況があり、認知症で思いどおりにいかないこともあった日々の中で手を上げてしまったというのは、その人が悪いということではなく、環境がそうさせてしまうという現状があるというのは感じましたね。

:誰にでも起こりうる状況だとも考えられますよね。

秋本:家族の役割って、愛情として接することとか、家族であるということがまず尊いことだと思うのですが、介護をすべて家族だけでやろうとするとやっぱりしんどいものがあって。やはりそこは専門職に頼っていくことがすごく大事になると思います。実際に、私のおじいちゃんも現在認知症になり、実家で叔母とおばあちゃんが介護をしている状況です。今は週に5回デイサービスに通いながら、自分で歩くことや食事を摂ることは本当にゆっくりですができるので、家族や事業所の皆さんとのかかわりの中で、おじいちゃんを支えているという状況です。

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