恐怖の実話!悪夢と化した「夢の田舎暮らし」 場所によってはこんなにヤバい「人間関係」

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友美さんに笑顔が戻ったのにはワケがある。

集落で数々の恐怖体験をした末に、友美さんはやはり移住者夫婦の紹介で、わずかな距離にある、移住者が多い別荘地域に転住したのだ。そこには大阪や東京から来て子育て、田舎暮らしを満喫する多くの移住者が集まって住んでいる。

ゴミ出しはもちろん大丈夫だし、なにより「もの申す」などと称して人気の少ない神社の境内や公園に呼び出されることもなく、「厄介者」などという時代錯誤の暗い表現などとも無縁の新天地だ。

「ほんとに転住してよかった」と、友美さんはいう。

「古民家にいるときは、今日は洗濯物が干してあったな、今日は少なかったなとか、縁側に干してある洗濯物の内容から量まで、集落の皆が皆、そんなのを全部見てて、見てても黙ってればいいのに、それをまた全部、会うたびに言葉に出すんですよ。車があれば、なんで晴れてるのに家にいる、車がなければ、どこに行ってたって。誰かの親が遊びにくれば、菓子折を持って行くふりして、どんな親か様子を見てこい、ですからね。都会暮らしを経験した人が、そんな習慣のなかで生きるのは大変なストレスだと思いますよ」

そんな実態を、役所の移住担当者はおろか、田舎暮らしの本や、テレビの移住番組なんかでは教えてくれない。

「よかったですよ、集落を出て。だって子どもが大きくなると、組に入ってない家の子どもはお祭りにも参加できないんですから。お祭りは組のものだから。ゴミと一緒ですよ」

不都合な真実は決して教えない、移住礼賛、田舎暮らし礼賛とは、いかに罪深いものだろうか。

集落移住にはもう懲り懲り

友美さんは今、ようやく集落の目を気にせず、別荘地のなかで東京や大阪からの、さらに地元出身でありながら、やはり集落暮らしは耐えられないと別荘地域へと転住してきた同世代の友人夫婦らと、週末は楽しく、心豊かな日々を過ごしている。

そこには、因習悪弊とは無縁の、心から望んだ田舎暮らしの開放的な空気が満ちているという。

友美さんの転住先では、夕方にはフクロウが鳴き始める。そんな声を聞きながら、バルコニーで野菜を調理しご主人と缶ビールを開ける。夜は隣家を気にすることなく月明かりに浮かぶ、南アルプスから富士山へと連なる稜線を眼下にハンモックに揺られる。明日への気力が漲る瞬間だという。

これこそが、都会で夢描いていた田舎暮らし、であろう。今はただ、田舎暮らしを考えたかつての瞬間に、もっと早く「不都合な真実」を教えてもらえていれば、と思うだけだ。田舎暮らしが一大ビジネスになってしまっている今、それは誰も教えてくれない。自分自身でもがいた末に理想の田舎暮らしを得た友美さんは今、こう考えている。

「もう少ししたら、近くにもう一軒買って、都会の両親を呼び寄せてもいいかな」

もちろん、集落移住にはもう懲り懲りだ。

清泉 亮 移住アドバイザー

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せいせん とおる / Toru Seisen

地方移住歴20年超のベテラン・イジュラー。1974年生まれ。幼少期から20代前半まで米国で過ごす。1990年代半ばから週末移住をはじめ、過去20年以上にわたり東北から沖縄まで日本各地を転住しながら暮らす。現在は本州中部を拠点に、村落で古老からの聞き取りをしながら、移住者への適応アドバイスや、移住地での生活トラブルの相談に乗っている。

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