ステップワゴンがセレナに追いつけないワケ 待望のハイブリッド追加で販売挽回しても

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それ以外の要因を挙げるなら、ホンダ、日産の取り扱い車種との関係だろう。日産にとってセレナはコンパクトカー「ノート」と並ぶ売れ筋車種。SUV「エクストレイル」も比較的堅調だが、それ以外の主力車種はモデルがかなり古い。

例を挙げればコンパクトカー「キューブ」は2008年、同じくコンパクトカーの「マーチ」、ミニバン「エルグランド」が2010年にそれぞれ現行モデルが登場。細かな改良は加えているが、フルモデルチェンジは久しくしておらず、販売現場も力を入れて売っている車ではない。

ホンダにはマーチやキューブと競合する「フィット」(2013年登場)、コンパクトミニバンの「フリード」(2016年登場)、SUV「ヴェゼル」(2013年登場)といった比較的新しいモデルの販売が堅調なだけでなく、軽自動車の販売比率も高い。その大きな要素になっているのが圧倒的な売れ行きを誇る「N-BOX」の存在だ。

2017年のホンダの国内新車販売台数72.3万台(乗用車38.1万台、軽自動車34.2万台)のうち、軽自動車は5割近く、N-BOXは3割に当たる21.8万台も売れている。商品力も高く売りやすい車だけに、販売現場もN-BOXに傾注しやすくなっている。

日産も軽自動車を売っているが、2017年の国内新車販売台数52.7万台(乗用車38.1万台、軽自動車18.2万台)のうち3割強とホンダほど、軽自動車に傾注はしていない。

つまり、セレナの販売に力を入れやすい日産と、ステップワゴンの販売に力を回しにくいホンダという構造がある。

一気にダウンサイズしてしまう傾向が目立つ

セレナもエルグランドからのダウンサイズニーズや、キューブやノートからのアップサイズニーズを取り込んでいる。しかしホンダは販売店関係者に言わせると、たとえば、ステップワゴンよりも格上のミニバンである「エリシオン」や「オデッセイ」ユーザーが一気に「フリード」や「N-BOX」へダウンサイズしてしまう傾向が目立ち、ステップワゴンユーザー自体も同じ傾向があるという。

N-BOXやフリードユーザーの代替えを、ステップワゴンに誘導しようとしても、もともとホンダ車ユーザーは定着率(ホンダ車からホンダ車へ代替えを続けてくれる)がトヨタや日産よりも高くなく、新車購入後のメンテナンスや車検などの法定点検は格安車検業者やガソリンスタンドなどに流れ、ホンダディーラーへの入庫率も悪いとみられている。ほぼ“売り切り”のような状態となってしまい、セールスマンも思うようなアフターフォローができないので、販促活動が難しくなっているようである。

マイチェンで商品力を増したステップワゴンがノア3兄弟はおろか、セレナの背中もなかなか見えないのは、複雑に絡み合った理由によるもののようである。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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