「九州パンケーキ」はなぜ全国に浸透したのか 地元資源の掛け算で地域ブランドを構築
家庭向け商品からはじまった九州パンケーキは、カフェメニューへの提供や専門店の開設など、活動は横展開で広がっていきます。2013年には農林水産省主催の「第1回地場もん国民大賞」で金賞を受賞し、SNSでの拡散やテレビ番組への出演などもあいまって、知名度は一気に高まっていきました。
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全国から出店のオファーが相次ぐ中、国内の店舗展開は九州だけに絞ることを村岡さんは決断します。九州という名が冠されているからには、県外での販売実績を上げることよりも、まずは地元の人たちに食べてもらうことを優先すべきだと考えたのです。九州で愛されていれば、 輪は自然と外に広がるはずだと。
九州に観光客を誘致したいという単なる打算はそこにはありません。全国の人たちに知ってもらいたい九州の素敵な場所にカフェを作り、原風景と食がセットになった“九州だからこそ作れる思い出”を提供したいという純粋な思いが根底にあります。
地元のお客様が第一という考えのもと、原料へのこだわりや商品に込めた思いを伝えるために、昨年は年間100回を超えるイベントを開催したそうです。商店街の空き店舗を利用したパンケーキ教室、商品を販売しているスーパーでの料理教室、幼稚園や小学校での食育。地元で愛されるブランドになるために、地道な活動を一つひとつ積み重ねています。
共同体で巻き起こる渦
九州に軸足を据える一方、もう一方の足は世界へと踏み出しています。2015年には台湾に、2016年にはシンガポールに「九州パンケーキカフェ」がオープンしました。世界に向けてKYUSHUを発信し、 インバウンドの活性につなげることが狙いです。
世界に向けたブランド発信はローカルなブランドにとってハードルが高いかもしれませんが、境界線をまたいで形成されたリージョナルな共同体であれば、お互いに知恵を出し合し、強みを生かし合うことができます。事実、村岡さんの想いに共鳴する賛同者が増える中で「九州独自のリージョナルブランドをつくろう」という渦が巻き起こっており、私も渦に引き込まれている1人です。
九州パンケーキが体現しているのは、当たり前のようにある地元資源も掛け算の仕方によって価値が再編集され、これまでとは切り口の違うサービスに落とし込めるということ。リージョナルブランドをつくるという発想を持つことは、地元を盛り上げていく上で1つのカギとなるはずです。
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