シダックス、カラオケ事業売却に至った事情 会長は「撤退を否定」するが、自主運営は断念

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1993年、カラオケ事業を展開するSCを設立し、本格参入した。2004年に300店舗に達し、2007年前後にはカラオケ事業だけで売上高600億円余り、セグメント利益率は10%前後に上り、同事業がグループ全体の利益の大半を稼いでいる状況だった。

シダックスの武器は大型店戦略にあった。都内の主要駅付近や郊外の幹線道路沿いに大型の店舗を出店。大規模な飲み会の2次会需要などを獲得し、業績を伸ばした。

当初は高収益を生んだ大型店だが、飲酒に対する規制が厳しくなったり、低価格・1人カラオケが台頭したりして、業界の競争環境は徐々に変わっていった。そして店舗戦略の失敗がシダックスの手足を縛った。自社が店舗を建てた時の土地賃貸契約が15~20年と長期に及ぶものが多く、解約には高額の違約金が発生するため、抜本的な対策が遅れた。

1人負けのシダックス

2016年に不振店の約100店を別会社(STC)に移行。閉店可能なものは閉店し、残りは取引先を引き受け手に増資を実施、自社は持ち分化とすることで損失を抑えた。残っている店舗の一部も同業他社へ譲渡したり、転貸借を進め、2018年3月末には182店まで縮小した。

カラオケ業界そのものは成熟化しているが、ほぼ横ばい状況が続く。「ビッグエコー」(第一興商)や「まねきねこ」(コシダカHD)が比較的堅調なのに、大手ではシダックスだけが1人負けし、退場を迫られた格好だ。

同時にシダックスは議決権はないが、配当などに優先権がある優先株を発行し、資本の増強も行う。カラオケ事業の減損が相次ぎ、同社の純資産は2018年3月期末の純資産は50億円、自己資本比率は10.2%に低下した。

政策投資銀行や三井住友銀行が出資する投資ファンド、UDSコーポレート・メザニン投資事業有限責任組合を引き受け手に第3者割当増資を実施し、25億円を調達する計画だ。

東洋経済の取材に、志太会長は「寂しさはあるが、カラオケ館と組むことで今までにないカラオケの新しい業態ができればうれしい」と答えている。

かつての輝きを失い、大きな損失を垂れ流したシダックス。寂しさばかりでは、売られた部門の従業員やアルバイトたちが報われない。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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