小田急ロマンスカー「ふじさん」は定着するか 伝統の「あさぎり」を名称変更、訪日客にPR
一方、御殿場線沿線の観光関係者などは「ふじさん」への変更を歓迎している。
御殿場市観光協会の担当者は「もともと朝霧高原まで行く列車ではなかったので、地元としてはこちらのほうがしっくりくる」といい、地域では以前から名前を変えてほしいという声があったと話す。御殿場線沿線の自治体でつくる「御殿場線利活用推進協議会」でも、「公式な要望としては行っていないが、地元には『あさぎり』という名前を変えてほしいという声がある、という話を(小田急などに)したことはあったようだ」と、同協議会に参加する自治体の担当者はいう。
小田急によると、今回の改名はあくまで同社とJR東海で決めたもので、要望などを受けたためではないというが、結果的に地域の観光関係者らの願いがかなった形となったようだ。
御殿場=富士山のイメージをPR
地元が期待するのは、新宿と御殿場を結ぶ特急列車の名前が「ふじさん」に変わったことで、「御殿場=富士山」というイメージが定着することだ。
観光協会の担当者は「御殿場は登山口もある富士山の街だが、そういったイメージをあまり持たれていないのが実情」と話す。環境省が集計した登山道別の富士山登山者数(2016年7月1日~9月10日)では、4つある登山ルートのうち御殿場ルートの登山者が最も少なく1万5697人。経験者向きのルートとされていることも理由だが、最も多い吉田ルート(山梨県側)の15万1969人と比べるとその差は大きい。御殿場と同じ静岡県側の富士宮ルートは5万9799人で、こちらと比較してもだいぶ開きがある。
だが、御殿場は東名高速道路が通っており、鉄道利用でも特急で新宿から約1時間半と都心から近く、交通の利便性は高い。観光協会の担当者は「新宿に直通する特急の名前が『ふじさん』になったことで、御殿場が交通アクセス便利な富士山の玄関口であることを首都圏でアピールできる。御殿場ルートはベテラン向き登山道と言われるが、ほかのルートで登った人の下山ルートとしてもPRしたい」と期待感を示す。
地元はもちろん、小田急も御殿場周辺の観光テコ入れの要素として、特急「ふじさん」に期待を寄せる。小田急は「御殿場プレミアム・アウトレット」で造成が進む第4期増設エリア内に2019年冬、ホテルと日帰り温泉施設を開業予定。地理的に近く、小田急グループの代表的な観光地である箱根と合わせ、観光エリアの拡大を図りたい構えだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら