そのLRTは本当に「次世代型」路面電車なのか 新型車両導入より運賃収受方法の改革が必要

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ストラスブールでは、バイパス道路を建設して通過自動車を迂回させ、都心部へ来る自動車利用者は市街地外縁のLRT停留所で自動車からLRTに乗り継ぐ。いわゆる「パーク・アンド・ライド」を導入した。自動車からの乗り継ぎ旅客を受け入れるためにLRTの車両は大きくした。この結果、都心部へ流入する自動車が減少し、幹線街路はLRTのトランジットモールとなり、一部区間には自動車通行帯を設けたが1車線だけとした。

トラムかVALかが争点になった市長選の時、すでにフランスではナントとグルノーブルにはトラムが復活しており、市民は新しいトラム、とくに、グルノーブルの部分低床車の利便性、トラムを活かしたまちづくりについて見聞きしていた。こうした状況の中での論争だったから、市民はトラム復活に合点し、市長選後はスムーズに事が運んだ。

では、宇都宮ではLRT計画は市民に十分に伝わっているのだろうか。LRTで何がしたいのかが見えないとも言われている。「LRTによる未来のモビリティ都市の創造」と言うが、LRTの役目は何か、である。

これまでの路面電車と何が違う?

そもそも、LRTとはどんな乗り物なのか。これについて、宇都宮市のウェブサイトはQ&A形式で説明している。

「LRTってなに?路面電車?」については、「LRTとは、Light Rail Transitの省略です。LRTは、昔ながらの路面電車とは違い、最新の技術が反映された次世代型の路面電車です」と解説している。そして、その特徴として「①騒音振動が少なく快適な乗り心地、②車両の床面とホーム(乗り場)との間に段差や隙間がほとんどない、③専用レールを走るため、時間に正確な運行が可能、④洗練されたデザインは、「まちのシンボル」になる、⑤道路上を走るので、ほかの交通手段との連携がスムーズ」の5つを挙げ、動画(福井鉄道、富山ライトレール、広島電鉄で撮影したもの)でも説明している。

ストラスブールのLRT。通勤電車のように編成が長い(筆者撮影)

次に、「乗車方法と支払い」については「LRTは、主に道路上に設置した停留場から乗車・降車し、歩行者信号と横断歩道に従ってアクセスします。運賃の支払いは、ICカードの導入により、スムーズな乗り降りを目指していきます」と説明し、動画(富山ライトレール、広島電鉄で撮影)で、運転士横のカードリードライタに乗客がICカードをタッチする様子を示している。

しかし、ちょっと待ってほしい。これではわが国ですでに走っている路面電車とまったく同じではないか。「LRTは、昔ながらの路面電車とは違い、最新の技術が反映された次世代型の路面電車です」という前段の記述と矛盾し、「これまでの路面電車と何が違うの?」という質問には全く答えていない。

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