「第2のテスラ」狙う中国EVベンチャーの実力 元BMW幹部が開発、超ハイテクEVは可能か

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ここ数年バブルが続いてきた中国EVベンチャーへの投資環境がトーンダウンしていることも、バイトンには逆風だ。華々しくデビューしてきた中国のEVベンチャーのうち複数が、量産にこぎ着ける前に空中分解してきたからだ。

相次ぎつまずく中国発ベンチャー

一時はテスラのライバルとも持てはやされたベンチャーのファラデー・フューチャーは、重役の離職や技術的なトラブルに加え、資金繰りが悪化。2017年10月には米ネバダ州に10億ドルをかけて建設中だった工場の建設を取りやめた。さらに、ネット分野からEVに参入したLeEco(ル・エコ)も、資金面の悪化でトップが辞任する事態に見舞われている。こうした惨状を指して、「パワーポイント上だけで車作りをしている」と揶揄する声もある。

さらに、世界最大のEV市場となる中国を目掛け、日欧の大手自動車メーカーも一気にアクセルを踏み始めた。米紙の報道によれば、テスラが上海市の特区に工場を建設することで政府と合意。バイトンは、まずは年間10万台、将来的には30万台の量産計画を掲げるが、テスラですら米国での量産に苦戦している状況だ。ここに太刀打ちするのは容易ではない。

ただ前出の呉氏によれば、中国でEVベンチャーが生き残る唯一の方法として「現地企業と組んで合弁会社を作るべき」と主張する。たとえば、「NIO」というブランドでスーパーカーを作るNextEVは、地場の自動車メーカーJAC(安徽江淮汽車)と手を組んで生産を委託する予定だという。

バイトンが作った未来の車が、本当に道を走る日は来るのか。それとも、他のEVベンチャー同様、絵に描いた餅で終わるのか。本当の正念場はこれからだ。
 

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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