ロヒンギャが直面する想像以上に深刻な対立 ヒンドゥー教徒・仏教徒も命の危険に怯える
宗教がからむ形での住民殺戮は、バングラデシュにある別の難民キャンプでも聞かされた。迫害されているはずのロヒンギャたちは、別の宗教を攻撃しているのだ。
「イスラムに改宗しろ、さもなくばヒンドゥー教徒は殺すと脅された。行方不明になった人たちだってたくさんいる」
そう話すのは、夫を失い、必死にミャンマーから出国した女性。彼女が身を寄せているのはクトゥパロン・キャンプからほんの数キロ離れた、「ヒンドゥパラ」と呼ばれる難民キャンプ。人数は約500人と小規模で、全員がヒンドゥー教徒だという。幹線道路にまで人があふれるイスラム教徒のキャンプとは異なり、そこは奥まった場所にひっそりとあった。
ロヒンギャから迫害される人たち
「われわれを襲ったのはロヒンギャです。ここに来てからもイスラムのロヒンギャから暴力を受けて安心できない」
多くのヒンドゥー教徒難民が、ミャンマーで経験したロヒンギャからの迫害と被害を口にする。中には「ARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)」と武装勢力の名前を挙げ訴える者もいたが、他方、ミャンマー軍に追い出されたと話す難民もいて情報は錯綜していた。
ミャンマー軍は最近になって国内で虐殺されたヒンドゥー教徒の集団墓地をたびたび発見し、そこに埋葬された人々の殺害を「ロヒンギャの仕業だ」と報告している。対してバングラデシュに避難したロヒンギャ難民は、ヒンドゥー教徒の虐殺は仏教徒、すなわちミャンマー軍が行ったと主張する。ミャンマー軍の言い分に同意し協力するヒンドゥー教徒を非難する声も、ロヒンギャたちからは聞こえた。
こうなると本当はなにが起こっているのか分からなくなってくる。確かなことは、ミャンマー国内においてもっとも少数派であるヒンドゥー教徒が、自分たちより多数派の“何か”に迫害され、難民化したということだ。
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