人気アプリの裏にあるネット広告不正の実態 ダウンロード成果を横取りするあきれた手口

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いちばん割を食っているのは、本来であればラストクリックを獲得していたメディアだろう。成果を横取りされたに等しい。広告主も被害者だ。悪徳業者が広告をクリックしたようにみせかけているだけなので、もしかしたらアプリ販売ストアに自然にたどり着いていたユーザーかもしれない。つまり無駄な広告費を払っている可能性があるのだ。

悪徳業者を利する「質より量」の広告

手口を明かしてくれた関係者は、この手の不正はアプリのダウンロード数だけでなく、広告のクリック数も併せてみれば発見できると指摘する。

「不正を働いているメディアは、30万クリックなどクリック数がほかより突出する。一方でダウンロードに結びついたのはそのうちの0.01%など明らかに低くなる」からだ。業界用語でいうと、クリック数とCVR(コンバージョンレート)をチェックするのがポイントになる。

このように発見する手だてはそれなりにあるにもかかわらず、広告主とメディアをつなぐアドネットワークや複数の広告主の意向をまとめているDSPと呼ばれる事業者は口をつぐんでいると、憤りをあらわにする。

週刊東洋経済12月18日発売号の特集「ネット広告の闇」でも指摘したように、ネット広告を取り巻く「質より量」という風潮は悪徳業者を利する方向に働いている。

商品購入に直接結び付くことを期待した出稿がネット広告市場の伸びを牽引してきた。スマホの普及など市場全体の拡大もあり、量の確保が優先され、メディアには広告枠の供給増が求められた。その流れに悪徳業者の運営するメディアが乗り、ボットなどを使った広告詐欺行為が生まれた。

不正に気づかないままだと広告の効果が表面上は認められるので、さらに量を増やそうという動きになる。量を追い求めるサイクルが悪徳業者の肥やしとなっている。

このサイクルの中では、悪徳業者の不正を見逃しておこうかという誘惑に駆られる中間事業者も出てくる。アドネットワークなど広告主を相手にビジネスする側にとっては、不正であるとの確かな証拠がないかぎり、自ら広告配信対象先のメディアを切り捨てる理由はない。

広告主である企業は自衛のために、広告詐欺の現状を理解することから始める必要がある。知らぬ間に不正に利用されている、われわれ個人も人ごとではいられないはずだ。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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