三越伊勢丹、具体論なき中計にみる前途多難 損失が膨らみ、今年度は最終赤字の可能性も

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杉江俊彦社長は大西洋前社長の電撃辞任を受け、今年4月に就任した(撮影:今井康一)

成長戦略となると、さらに歯切れが悪くなる。EC事業の拡大で、固定客を増やす狙いだが、「外部の知見を入れながら、来年の4月ぐらいから進めていきたい。スケジュールみたいなものは組んでいるが、まだまだ精度が低い」(杉江社長)と、具体的な戦略については言及しなかった。

基幹店の伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店については、それぞれ100億円規模の投資をすることも公表。だが、これまで「2018年春には大規模改装を終える」としていた三越日本橋本店の改装は、来年秋に本館1階をリモデルするだけの内容に後退した。伊勢丹新宿本店への投資については、「日本橋の次になる」(杉江社長)と述べ、詳細には触れなかった。

最終赤字でも受け止める

伊勢丹松戸店は地元との交渉の末、来年3月に閉鎖する(編集部撮影)

インバウンド需要の増加を受けて、伊勢丹新宿本店や三越銀座店の足元の売り上げは好調だ。ただ、2017年度は改装負担などにより営業利益180億円(前期比25%減)、当期純利益100億円(同33%減)と減益を見込む。

ここに早期退職制度の負担や在庫処理関連の負担などが加わると、2009年度以来の最終赤字に転落する懸念もある。「(損失処理が)たくさん出て、仮に今期最終赤字になるとしても、しっかりとそれは受け止める」(杉江社長)。

ライバルのJ. フロント リテイリングは不動産主体の事業モデルへと転換を進め、2017年度の営業利益は前期比17%増の490億円(国際会計基準)を計画。高島屋もテナントを集めた店舗運営で、営業利益は前期比6%増の360億円を見込んでいる。

ある三越伊勢丹関係者は「伊勢丹ブランドが強かったため、いまだに勝ち組の意識が拭えないのではないか。百貨店業界を取り巻く環境は厳しいのに、危機感が足りない」と語る。

杉江社長は構造改革を押し進め収益を改善し、その後、成長に向けてアクセルを踏み込む青写真を描いている。だが、今回の具体策なき中期計画を見る限り、三越伊勢丹HDの視界不良は当面続きそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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