勝負師の小池都知事が練った「三段跳び」戦略 あおり食った民進党は「分党」「解党」へ大混乱

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公式動画は、暗いトンネルに靴音を響かせながら光のみえる出口に向かうグリーンのスーツに白いハイヒールの女性の後ろ姿をカメラが追う。両側から「歯向かう気か」「組織をなめるな」などの字幕とともににらみつける男たちをかき分けて女性が光の中に踏み出すと、画面いっぱいに「希望の党」の文字が広がる。小池氏側近の若狭勝衆院議員は「私が1か月前からつくり始めた」と語るが、出来栄えも含め「企画演出は小池氏に間違いない」(自民幹部)とみられている。

さらに、「希望の党」という名称についても、小池氏自身が今年2月に商標登録を出願し、9月1日に登録されたとの経緯も明らかになった。小池氏は「首相が冒頭解散に打って出ることを、改革実現のチャンスととらえた」と語ったが、動画作成も含め、解散風が吹く前から新党結党の準備を進めていたことを裏付けた。この点について小池氏は「様々な事態を想定しないのは政治家ではない」と不敵な笑みを浮かべた。

結党会見には、若狭氏とともに新党旗揚げ準備を進めてきた細野豪志元環境相に加え、松原仁元国家公安委員長、長島昭久元防衛副大臣ら民進党離党組に、自民党を離党して馳せ参じた福田峰之前内閣府副大臣、「日本のこころ」を離党した中山恭子元拉致担当相らを加えた14人(うち女性2人)が参加し、それぞれ決意と抱負を述べた。

小池氏退場後は"小池チルドレン"の集会に

ただ、代表としての記者会見後、都知事の政務のため小池氏が途中退席すると会場は一気に緊張感とざわめきを失った。壇上で小池氏の両脇を固めた若狭、細野両氏も含め、会場に残った面々は閣僚経験者も含めて「王者の牡ライオンが去ったあとの牝ライオンや子ライオンの集まりにもみえた」(参加記者)という。まさに現職議員たちも「小池チルドレン」の風情だったわけだ。

小池氏は「東京だけでなく全国的に候補者を擁立する」としており、名古屋や大阪、さらには福岡など各大都市の小選挙区に公認候補を立てることで、比例票の獲得も狙う戦略だ。その一方で前原氏との会談では民進党との連携も話し合い、「野党の結集が必要」との認識で一致し、共産党などのいわゆる革新勢力を除く野党勢力の結集を目指すことを確認したとされる。

野党が一つになって選挙を戦う、いわゆる「オリーブの木」を持論とする小沢一郎氏の率いる自由党や社民党も含めた統一候補の擁立に向け、前原氏が希望の党との合流を28日の解散に合わせて民進党両院議員総会で諮る案も急浮上した。

前原氏は27日夜、「どんな手段を使ってでも安倍政権を終わらせる。野党がバラバラでは選挙は勝てない」と語った。これに関連して前原氏周辺は「前原代表は衆院選に無所属で出馬する」との見通しを示した。これは、民進党を事実上解党して希望の党になだれ込み、同党主導で共産党を除く「野党統一候補」を各小選挙区に擁立して安倍政権打倒を狙うという「捨て身の作戦」(前原氏周辺)だ。ただ、民進党の組合出身者を軸とするリベラルグループは、共産党との選挙共闘を求めているだけに、党内調整が難航し、28日の解散後に分党や解党をめぐって党内が大混乱に陥る可能性も少なくない。

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