インドが仏TGVを退け「新幹線」を選んだ背景

将来は高速鉄道車両の輸出国を目指す

インド国鉄は、「2020年までに無人の踏切をなくす」との目標を掲げており、これにより跨線橋や地下道の建設を進めるほか、列車の接近を知らせる新たな技術の導入を行うという。専用線で走る新幹線方式が採用されることもインドの鉄道の事故軽減に多少なりとも貢献するはずだ。

高速鉄道の起工式では赤いE6系の存在感が際立った(写真:PMIndia)

ムンバイ―アーメダバード間に導入される車両の製造元はいまのところ決まっていない。先にインド側の報道で「JR東日本のE5系10両編成を25本となる予定」といった極めて具体的な数字が出たりもしたが、乗客需要がはっきりしない現状において、車両の導入数まで決定するのは無理と言うものだ。ただ、日本側はインドへの売り込みに際してE5系のデザインをしばしば用いており、インド側も起工式に際し、「赤いE6系が2021年6月に到着」と説明するビデオを作成していることから、E5系やE6系をベースに開発されることになるのかもしれないが。

14日の式典は、アーメダバードの中心街から見て北西に位置するサバルマティ駅近くの運動場で行われた。この場所に高速鉄道の終着駅が置かれる予定だ。ここには現在、アーメダバードとグジャラート州の州都・ガンディーナガルを結ぶBRT(バス高速輸送システム)が通っているが、建設中のアーメダバードメトロ(地下鉄)の駅もできる予定で、新たな交通の要衝になることが期待されている。

今回起工した高速鉄道は、在来線とは全く違うルートを取ることになっているが、アーメダバード駅には、現在長距離輸送を担う国鉄の在来線に加え、メトロと高速鉄道が乗り入れる見込みだ。

ただ、現地で話を聞くと「交通が便利になればなるほど、地方からいろいろな人々が集まってくる。都会へのさらなる人口集中が起こらなければいいのだが……」と懸念する声も聞こえてくる。

現地生産へのこだわり

日本が初めて国外に新幹線方式で輸出が成功した台湾のケースでは、J新幹線700系の改良型である「700T」が 川崎重工業、日立製作所、日本車輌製造の3社により生産され、台湾へ輸出された。

英国やイタリアでの高速車両生産の実績を持つ日立製作所は、「現時点では積極的に受注活動に取り組んでいるという状況で、生産の分担などは未定」としながらも、「JR各社で豊富な経験と実績を持つ車両・信号・運行管理などの新幹線コアシステムについて受注を目指して活動を進めており、インドへも新幹線システム導入の実現に向け、日本政府やJR東日本と緊密に連携し、積極的に対応する」と意欲を示している。

インドを走る車両については、モディ首相が16年11月の訪日の際、「Make in India(インドで造る)」と現地生産にこだわりを見せている。その先には高速鉄道の輸出国になりたいという思いがある。

モディ首相は起工式に引き続き行われた日印年次サミットで「インドにミニジャパンを設けたい」といった構想も口にしており、「シンカンセン」だけでなく、サービス業を含めた日本の先進的な様々な企業による投資への期待も感じられる。日本がリードするさまざまな先進的な技術や文化をアジアの大国、インドへ伝えるためには、高速鉄道を何としても成功させなければならない。

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