「VALU」の個人価値売買が熱視線を浴びる本質 不正取引発生で全否定するのは間違いだ

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8月18日、VALUは一部の利用者が規約違反を起こしたとして取引制限をかけたうえで、売買注文をすべてキャンセルすることを明らかにした(https://help.valu.is/article/71-article)。名前が出ているヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏(禁断ボーイズ)はいずれも同じ事務所に所属するユーチューバー。中でもヒカル氏は、数多くのアクセスを集める人気者だ。

本件についての直接的な評価は避けるが、彼らは所属事務所の大株主で、かつて情報商材のネット販売で事業を共にしていた井川氏に多くのVAを安値で譲渡した後、多くのファンが見ているTwitter上でVALUユーザーに対して優待を匂わすツイートを書き込んだと報道されている(現時点では消されており、ヒカル氏は優待を約束したことはないと発言している)。

このツイートを読んだ、あるいはうわさを聞いたファンたちの注文により価格が高騰。ここで井川氏など関係者は、取得していたVAをストップ高で放出した。ところが翌日になってヒカル氏が突然、全VAを売却に出したうえ、優待を実施する予定はないと発言した。これによりヒカル氏のVAは暴落。高値でVAを放出した井川氏や事務所仲間はこの間、多くのBTCを得た。取引履歴を見るかぎり、最大で5000万円相当程度のBTCを得たようだ。

株取引でいうならば、インサイダー取引や風説の流布による価格吊り上げ、あるいは詐欺が疑われるところだ。しかし、ヒカル氏のユーチューバーとしての収入は、そのフォロワー数などから類推すると年間5000万円前後あると推定される。本業における売り上げと、本件における評判の低下リスクのバランスを考えるならば、詐欺でお金を集める意図はなかったのかもしれない。

どのように市場の健全性を保っていくのか

しかしながら、そうした状況を考慮することなく冷静に俯瞰(ふかん)するならば、VA販売者は実施されない優待を期待させないことはもちろん、そうしたうわさを耳にした時点で即座に否定すべきであり、また全VA放出直前にインサイダーが大量放出したならば、放出時期を延期するなどの配慮をせねばならなかったはずだ。

運営側も長期にわたって合法性を検討してきた経緯を考えるならば、株取引では明確に違法とされている今回のような疑わしい取引の発生が想定できなかったとはいえない。

本件は売買注文をすべて無効にしたうえで、上記ユーチューバー3人が自VAを買い戻すということで決着したが、取引時のシステム手数料は利用者に戻ってこない。またVA暴落時に損切りで損害を確定した利用者は、買い戻してもらうべきVAをすでに失っている。

それもこれも「その人物を支援するかどうかを決めるのは自分自身」であることを考えれば、支援者自身の責任ともいえるが、上記4氏の意図がどうであるにせよ、不正取引が疑われる状況において、どのように市場の健全性を保っていくのか。

まだ生まれたばかりのVALUの今後については、VALUへの取材などを通じて継続的に追っていきたい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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