JR貨物の将来を左右する「線路使用料」の実態 貨物有利なルール、上場なら見直し必要に?
JR貨物が線路の所有者に支払う線路使用料は6費目から成り立つ。電気・通信設備を除く線路の維持費用である「線路保存費」、電気・通信設備の維持費用である「電路保存費」、線路全般の保守の作業管理に要する費用である「保守管理費」、運転・運輸の作業管理に要する費用である「輸送管理費」、線路や設備の保守部門・総務企画部門に関連する総括的業務に係る費用である「一般管理費」、将来の設備更新に係る減価償却費の一部である「資本経費」だ。これらを合わせた後、1%分のインセンティブを加えた金額が線路使用料となる。
いま挙げた6費目について、JR貨物は貨物列車の走行状況に応じて支払う。その算出方法は複雑だ。線路、電路の両保存費の修繕費を基にJR貨物が負担する比率が基準となり、この比率によって保守、輸送、一般の各管理費、それから線路、電路の両保存費の人件費と業務費とのうち、JR貨物負担分が決められる仕組みだ。
線路使用料はアボイダブルコスト(回避可能経費)ルールといって、貨物列車が走行しなければ回避できる経費のみをJR貨物が負担する決まりが採用された。それだけに算出方法はJR貨物にとって非常に有利な内容となっている。
貨物列車の車両数は反映されず
修繕費の固定費の算出方法で用いられる「列車キロ」とは、列車の本数に走行キロを乗じたもので、一見平等な分け方に見えるがそうではない。貨物列車のように1本当たりの列車に連結されている車両の数が多い場合、車両数に走行キロを乗じた「車両キロ」との乖離が発生するからだ。まず線路保存費から見ていこう。固定費と変動費とに分けられている修繕費中の内訳は、国土交通省の統計や鉄道事業者各者の資料では明らかにされていない。とはいえ、修繕費とはもともと固定費に含まれるものであるから、大多数は固定費の名目となると考えられる。
一例として盛岡―目時(めとき)間82.0kmの線路を所有し、旅客列車を走らせているIGRいわて銀河鉄道を挙げ、JR貨物の線路使用料を試算してみよう。同鉄道で2014年度に記録された旅客列車の列車キロは139万8000km、車両キロは379万1000kmであった。旅客列車1本当たりの車両数は2.7両となる。
一方、筆者の試算では同鉄道を走る貨物列車の列車キロは105万6000km、貨物列車1本当たりの車両数は21両と考えて車両キロは2217万6000kmだ。つまり、JR貨物の負担比率は列車キロでは43.0%ながら、車両キロでは85.4%と大きな差がついてしまうのだ。
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