サントリー・ニッカが高価格ジンに挑む理由 ウイスキーブームの余波でジン参入が相次ぐ

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プレミアムジンのブームが勢いを見せ始めたのは2013年のこと。ユーロモニターによれば、世界のジンの消費量は、2013年の55.6万キロリットルから、2016年には63.2万キロリットルと、4年間で13%増えた。一方、ウイスキーは同期間に306万キロリットルから、326万キロリットルと、6.4%増にとどまる。

日本でも、ハイボールのヒットや2014〜2015年にNHKが放送した朝の連続テレビ小説「マッサン」の影響でウイスキー人気が高まっている。「ハイボールブームでアルコール度数の高い蒸溜酒に親しんだ消費者が、ジントニックなどでジンなどを飲むようになったのではないか」(バーテンダー協会の岸会長)。

実際、ジンの国内市場規模は拡大している。2016年度の市場規模は23.8億円と前年度比8.1%伸びた[インテージ SRI(全国小売店パネル調査)データ]。特に市場を牽引しているのはプレミアムジンだ。アサヒビールの推計によれば、市販価格3000円以上のジンは販売容量ベースで前年比55%伸びているという。

主戦場はバーと海外に

ウィスク・イーが販売する「季の美 京都ドライジン」。香りづけには緑茶やヒノキなど、すべて京都産の素材を使っている(写真:ウィスク・イー提供)

大手に先駆けて、プレミアムジン専門のメーカーも登場している。洋酒の輸入商社ウィスク・イー(東京都千代田区)は、2016年に京都にジン専門の蒸溜所を設立し、同年10月から製造・販売を行っている。

ウィスク・イーのプレミアムジン「季の美 京都ドライジン」(税別5000円)は、地元・京都産のボタニカルを使用して個性を強調。同社のデービッド・クロールCEOは、「5000円という強気な値付けだったが、販売は好調。年内にも国内外で年間10万本の販売を目標にしている」と話す。

ただ、値段が高いことに加えて、カクテルベースとしての利用も多いため、各社が狙っているのは家庭用消費よりも、バーなどの飲食店の業務用の需要だ。

「製品展開とブランドの認知は、バーが起点になると考えている」(アサヒビール・マーケティング本部マーケティング第三部の山根卓也氏)。アサヒは国内外のバーテンダーに向けて、ジンの魅力を伝えるセミナーを行うことでバー業態への浸透を図る。

その先に見据えるのが海外市場だ。メーカーにとっては柚子や山椒といった素材を使うことで、日本らしさをアピールしやすい。サントリースピリッツは当初から空港などの免税店での販売を実施。訪日観光客(インバウンド)の需要を掘り起こし、輸出拡大につなげる狙いだ。

海外でも、サントリースピリッツの「山崎」やニッカウヰスキーの「竹鶴」といった日本のウイスキーは知名度があり、高い評価を受けている。ただ、ブランドを確立するのには何十年にもわたる地道なマーケティングや販売実績を積み重ねてきた成果があってのこと。

欧米の強豪ブランドが圧倒的なシェアを誇る市場で、日本発のプレミアムジンは存在感を示せるのか。挑戦はこれから始まる。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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