安倍自民、大敗で狂う「総裁3選」「20年改憲」 7月に党・内閣改造の前倒しも「両刃の剣」

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首相サイドが「出直しのチャンス」(側近)と期待するのが党・内閣改造人事だ。首相は当初、9月末の自民党役員任期切れに合わせての改造人事を予定していたが、都議選惨敗による窮地脱出には早期の「人心一新」が必要との判断から早ければ7月下旬にも人事を断行する構えだ。ただ、60人近くとされる入閣待望組を中心とした「派閥順送り人事」では国民の批判に応えられず、かといって「首相が一本釣り人事を徹底すれば、各派領袖から恨みを買いかねない」(側近)とのジレンマがある。

「問題閣僚を一掃して、お友達優先でない実力者内閣を、と口で言うのはやさしいが、人事は両刃の剣」(首相経験者)だけに、人選次第では改造断行が裏目に出る可能性も小さくない。「これまで以上に(閣僚候補の)身体検査をしっかりやらないと、また問題閣僚が出れば致命傷になる」(同)というリスクもある。

次期衆院選圧勝や憲法改正も「夢物語」に?

そうした中、都議選惨敗で首相の改憲戦略も不透明感が増した。

首相は2012年の再登板後の国政選挙3連勝で築いた「1強体制」を背景に、(1)秋の臨時国会に新たな自民党改憲案提示、(2)来年の通常国会会期末までの改憲発議、(3)来年秋の改憲国民投票―との戦略を描いていたとされるが、「安倍改憲には賛成できない」とする石破茂前地方創生担当相らの批判に同調する声が拡大している。そもそも、与党の公明党は「野党第1党の民進党の協力を得ての改憲発議」(幹部)を主張しており、自民党内に慎重論が強まれば「2020年の新憲法施行」との首相の大目標も実現困難になりかねない。

首相は改憲発議と衆院解散を絡めて「一気に改憲実現に持ち込む考え」(側近)だったとされるが、その次期衆院選での圧勝も「もはや夢物語」(自民幹部)になりつつある。小池知事は3日の会見で「これから4年間、都政に専念する」と力説したが、小池氏周辺では「『都民ファーストの会』を『国民ファーストの会』に格上げして次期衆院選に殴り込む」との声も出る。今回の都議選結果を踏まえると「小池新党が衆院選で首都圏に新人候補を擁立すれば自民党議員の大量落選につながる」(自民選対)可能性は高い。そうなれば「改憲どころか自民党内での"安倍降ろし"の引き金になる」(自民長老)からだ。

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