南武線の混雑緩和へ「長編成化」は実現するか 首都圏JRで3番目の混雑路線だが電車は6両

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川崎市によると、今のところ長編成化に向けた取り組みについては「JRと協議を行っている」状況だ。JR側も「協議は進めているが、発表できる内容はない」と話す。

川崎市は2015年にJR東日本と「鉄道と沿線のブランド向上」や「公共交通の利用促進」などに向けた包括連携協定を結んだが、この中には「長編成化の内容は入っていない」(川崎市)という。稲田堤駅や津田山駅などでは駅のアクセス向上に向けた橋上駅舎化の取り組みも行われているが、長編成化に向けたホーム延伸などは予定していない。

南武線は川崎市だけでなく東京都内にも路線がまたがっているため、長編成化を行うとすればほかの自治体とも調整が必要になるとみられる。川崎市は数年前から、ほかの沿線自治体と南武線について意見交換を不定期に行っており、長編成化についても「否定の声はなく(同市と他自治体に)温度差はない」という。

ただ、意見交換は観光なども含めた南武線沿線についての全般的な内容がテーマで、長編成化に関する具体的な話を行っているわけではないという。

立体交差化で変化はあるか?

一方、尻手―武蔵小杉間では連続立体交差化の計画が進んでいる。川崎市は2018年の都市計画決定を目標として調査を進めており、現状では高架化か地下化かを含め具体的な工法はまだ決まっていないものの、現在の線路脇に仮の線路を敷いて運行を切り替え、現在の線路部分に高架を建設する「仮線高架」工法が総合的に優位とみているという。

立体交差化工事では、区間内にある矢向・鹿島田・平間・向河原の4駅は施設が一新されることになり、長編成化に向けては一つのチャンスともいえる。長編成化も立体交差化も、市の総合都市交通計画では「10年内に着手を目指す事業」の位置づけだ。仮線高架の場合、概算事業費は約1185億円。市によるとこの額は6両分のホームの場合だが、「着手する前に(編成が)延びていればそれに合わせることになるだろう」という。

川崎市は現在、2013年に策定した総合都市交通計画の中間見直し作業を行っており、すでに計画を休止している新路線「川崎縦貫高速鉄道」について廃止を前提に見直しを進めている。同鉄道は小田急線の新百合ヶ丘と武蔵小杉、さらに川崎までを結ぶ構想で、交通不便地域の解消とともに南武線など「既存路線の混雑緩和も目的とした計画だった」(川崎市)。縦貫鉄道計画がなくなると、市内を縦断する動脈である南武線の輸送力増強はより重要性が高まりそうだ。

今のところ進展は見えない南武線の長編成化。だが、施設の改築など難題は伴うものの、車両の増結はこれまでに多くの通勤鉄道が取り組んできた施策でもある。沿線の人気が高まる中、混雑緩和に向けた取り組みの今後が注目される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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