博士は、なぜ人生を懸けてバッタを追うのか ストイックすぎる狂気の博士のエッセイ

拡大
縮小
調査地で野営

なぜ命を懸けてまで?

ところでなぜ命を懸けてまで、著者は昆虫学者になりたかったのだろうか。その源流は、幼少時代にある。きっかけは『ファーブル昆虫記』。ファーブルに憧れ昆虫学者を志した著者はさらに、外国で大発生したバッタに女性観光客が緑色の服を食べられたことを知り、「バッタに食べられたい」という願望を抱くようになる。大学院時代にバッタ研究を行い、晴れてバッタ博士となった著者は、『地球の歩き方』にも載っていないアフリカのモーリタニアに単身乗り込む。アフリカでたびたび大発生するサバクトビバッタの研究を行うためだ。

葉っぱと思いきやすべてサバクトビバッタ

サバクトビバッタはアフリカの半砂漠地帯に生息する害虫である。「群生相」とよばれる飛翔能力に長けたモードになると、群れで長距離を飛行しながら農作物を食い荒らす。数百億匹が群れて、東京都の面積がバッタに覆われるほどになるという。地球の陸地の20パーセントにもおよぶ範囲がこのバッタ被害を受け、年間被害総額は西アフリカだけで400億円以上になり、深刻な貧困をもたらす一因となっている。

サバクトビバッタの生態を知ることでこの生物の弱点を炙り出せれば、防除に役立てることができるかもしれない。バッタの研究には大きな意義があるわけだ。

次ページバッタを好きなだけ研究できる、と思ったら…
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT