日本では不可能? 英国「母の日」にSL運転体験 母親限定、蒸気機関車を本線上で運転

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そんなロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道だが、祝日や子供たちの夏休みなどに合わせ、多くの特別イベントを開催する。この母の日のイベントもその1つで、乗車券を所持した母親(女性)限定で、同鉄道で実際に使用される蒸気機関車を自らの手で運転できるという、ほかに例を見ないイベントが行われた。同鉄道では、これまでも機関車体験運転のイベントを行ってきたが、母親限定という発想は面白い。今回の取材には家内が一緒にいたため、このイベントに参加してもらい、息子と共にその雄姿を見守ることにした。

まずは、このイベントが行われているニューロムニー駅へ。3線のうち、行き止まりになっている線路を使って、このイベントが行われていた。こんな珍しいイベント、さぞや混雑しているのかと思いきや、スタッフによれば、待ち人数は数人で約15分後、すぐ運転できるとのこと。リストに名前を書き込み、15分後に戻ってくると、ちょうど前の女性の運転する機関車がホームへ戻ってきたところだった。

口頭指導のみ、運転操作は自分でやる

母の日の体験運転イベントに使用された9号機「ウィンストン・チャーチル」号(筆者撮影)

体験イベントに使用される機関車は、シェフィールドのヨークシャー・エンジン・カンパニー社が1931年に製造した9号機で、通称「ウィンストン・チャーチル」のネームプレートを持つ。カナディアン・パシフィック鉄道の設計をベースにしているため、デザインにその影響を多く見ることができる。なぜカナダの機関車なのか、これはハウィーが同鉄道のファンだったことも関係しているが、それとは別に、ボディが小さいことにより、特に夏場の運転環境が非常に過酷となるため、機関士が日差しを避けられるように、英国型機関車より運転室が大きいカナダ型機関車を導入して、少しでも機関士の負担を軽減させようという配慮もあったとのこと。2013年には大規模なオーバーホールが行われ、シリンダーとテンダーを新調して運用に復帰した。この日は、日本でいう初心者マークの「L」というプレートを前面に付けていた。

指導機関士のアレンさんは、ボランティアとして同鉄道を支えた後、機関士の資格を取得し、現在は機関士として同鉄道で働いているとのこと。小さな鉄道とはいえ、遊園地の遊具ではなく、れっきとした公共鉄道なので、この操縦資格は1年に1度課される試験を更新し続けなければならないそうだ。

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