「宅配ロッカー」激増を支える黒子企業の正体 大手デベロッパーが採用、新機能が次々
たとえば神奈川県川崎市の149世帯のマンション。宅配ボックス数が15個、住戸に対する装備率が10%と、ロッカー数はやや少なめだが、マンションのエリアとタイプとから適正な数値をはじき出したはずだった。ところが、2016年の実績を見ると、入庫件数は3500件超、満杯警報が鳴ったのは278回にも及んだ。
フルタイムシステムの原周平副社長は「3年ほど前には発想の転換を迫られていた」と述懐する。当時から社内でこうした異変について何が起きているのか、議論を重ねていた。「振り返ってみると、自分たちも水などの日常品を通販で購入するようになった。さらにアマゾンの到来が”箱の大きさ革命”をもたらした」(同)と分析する。
EC市場の拡大に伴って、宅配物がそれまでの主流だったミカン箱サイズから、メール便やSサイズと呼ばれる小型の宅配物に変わり、流通量も膨大になった。これまでのように大きな箱で1度に送るという発想から、小さいものをその都度、送るという形態に変わった。
どのデベロッパーも「宅配ロッカーの開発には1年以上前から取り組んでいる」と口をそろえる。ただ間違いなくそのきっかけを与えたのは、利用状況の変化をいち早く察知したフルタイムシステムだった。
各階に共用の宅配ロッカーを設置
新型ロッカー導入は今後も続きそうだ。東京の足立区千住で三井不動産が計画中の、まだ建物の名称さえ決まっていない物件では、各階に共用の宅配ロッカーを設置する予定だ。
あらかじめヤマト運輸、日本郵便、佐川急便の3社にIDパスカードを発行。不在の場合はそのパスカードを使ってセキュリティエリア内に入り、各階の宅配ロッカーに配達してもらう仕組みだ。1階にもこの3社以外の配送会社用に宅配ロッカーを設置するため、宅配ロッカーの装備率は限りなく100%に近づく。
宅配ロッカーの仕組みに、「これが正解」というものは存在しない。ポイントは、宅配ドライバーの過重労働を緩和し、かつそこに住む人の利便性を向上させるシステムかどうかだ。社会的課題解決のために、宅配ロッカーも知られざる進化を続けている。
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