自民党「大宏池会」構想に渦巻く利害と思惑 キングメーカー狙いの麻生氏への疑心暗鬼も
麻生氏の狙う「大宏池会」について岸田氏が慎重姿勢を示すのは、「麻生派の面々が岸田首相・総裁の実現に協力する保証がない」(岸田氏側近)からだ。麻生氏は首相の盟友で安倍内閣のナンバー2でもある。しかも、来年9月の党総裁選での「安倍3選」支持を公言しており、岸田氏の出馬に同意するとは思えない。
麻生派は「大宏池会ができれば麻生会長・岸田総裁候補という布陣で、岸田政権樹立に邁進する」(側近)とのエールを送るが、岸田氏サイドは「麻生氏はキングメーカーになるのが目的。首相が突然退陣に追い込まれた場合のショートリリーフにも意欲をにじませているので信用できない」(側近)と顔をしかめる。しかも、岸田氏には「首相からの禅譲」への期待もあり、「大宏池会などポスト安倍への動きは首相の不興を買いかねない」(同)ことを懸念しているとされる。
そうした中、岸田派は4月19日に都内のホテルで毎年恒例の「宏池会と語る会」を開く。宏池会結成60年の記念パーティも兼ねるが、本格的な記念式典は5月28日に、創設者の故池田氏と現会長の岸田氏の地元である広島で開催する予定。広島市中央公園内に設置されている池田氏の銅像前に記念碑の建立か植樹を行うというイベントも企画中だ。
「振り子の論理」あるも当面は「派閥より国益優先」
現在の宏池会にとって「最後の首相」である故宮澤氏は、権力闘争が苦手だった。伝統的に「政局より政策」を優先してきた宏池会は永田町で「お公家集団」と揶揄されてきた。退陣後も"ご意見番"として活動を続けた宮澤氏は「あれが居るからね」が口癖だった。
「あれ」とは戦後政治への基本理念が異なる中曽根康弘元首相のことだ。安倍首相は中曽根氏の「戦後政治の総決算」の継承者にも見えるが、中曽根氏自身は周辺に「とうとう俺も左翼になったのかも」と冗談交じりに語るという。ここにきての「安倍政治」を、中曽根氏も「行き過ぎ」と感じているのだろう。その意味では現在の自民党にこそ「振り子の論理」が必要にも見える。
首相は北朝鮮情勢が緊迫する最中の4月15日午前、自らが主催する新宿御苑での「桜を見る会」で「風雪に 耐えて五年の 八重桜」との俳句を披露し、「森友学園疑惑」の渦中にある昭恵夫人とともに芸能人との写真撮影で満面の笑みを見せた。「森友」や「共謀罪」への批判を意識してか政権を取り巻く環境を「逆風」とも表現したが、内閣支持率が下がっていないこともあり、2018年9月の「3選」への自信はまったく揺らいでいないように見える。
副総理兼財務相の麻生氏は4月18日、来日するペンス米副大統領との初の「日米経済対話」に臨む。外相の岸田氏は派閥のパーティより北朝鮮情勢への対応に腐心せざるをえない。両氏とも「権力闘争や派閥再編遊びの暇はない」(自民長老)という状況に置かれている。当分は思惑や利害が錯綜する「大宏池会」構想より「国益を最優先」することがポスト安倍の主役となる道ではないか。
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