「民泊」が地方創生の起爆剤になりうるワケ 五輪で実績のAirbnb、ホテル不足に処方箋
2016年10月にAirbnbは岩手県釜石市と観光促進に関する覚書を締結した。釜石市は2019年に開催予定のラグビー・ワールド・カップで会場の1つに選定され、1万6000人を収容できるスタジアムを整備するが、市内の宿泊施設の受け入れ規模はたったの1000人強。
そのため同市では農家民泊制度などを活用しつつ、Airbnbと協力して一時的に急膨張する宿泊需要を民泊で迎え撃つことを検討している。釜石市の野田武則市長は「訪問客をお迎えできることを今から楽しみにしている。Airbnbと覚書を締結したことで三陸地域の観光を促進し、東日本大震災からの復興を加速したい」とコメントしている。
国内イベントで民泊を活用する試みはこれが初めてではない。2015年12月には福岡市が嵐とExileのコンサート開催期間中に同市内の宿泊施設がほぼ満室となることから、民泊を認める決定をし、全国的な話題となった。さらに2016年11月には、福岡市旅館業法施行条例の改正にも踏み込み、民泊サービスの規制緩和を行っている。
こうしたイベント開催時の民泊活用である、いわゆる「イベント民泊」については、昨年4月に観光庁からガイドラインが出ている。具体的には、年1回のイベントに関して、自治体の要請で自宅を提供する場合、旅館業法の営業許可は不要としている。こうしたイベント民泊は、反復継続しない宿泊サービスの提供であり「旅館業」として行うものではないといった理由で、間口が広がった形だ。
民泊が地方都市の活性化に役立つワケ
大きなイベントに足を運ぼうとする人が、民泊で安全に泊まれる宿を確保できるだけではない。地方都市がイベントの経済効果を最大限に享受しようとするときに、民泊はとても効果的な手段となる。そのメリットを順に3つ述べたい。
1. イベントの経済効果の地域内での享受
宿泊施設は平時の需要を満たすのに必要十分な部屋数しか確保していないため、スポーツ大会やコンサート、国際会議などの大イベント時には当然ながら部屋が不足してしまう。そのため、イベントが開催されても多くの訪問客は日帰りか、もしくは近隣都市に宿泊することになり、イベント開催都市自体にはイベント前後の限られた時間にしかとどまらないことになる。
が、民泊により一時的なピーク需要を吸収することができれば、より多くのイベント訪問客により長い間、その街に足をとどめてもらうことが可能だ。その結果、商店街や飲食店の商業機会を増やすことができて、イベントの経済効果を地域内でダイレクトに享受することができるようになるはずだ。Airbnbのデータによると、宿泊客は旅行支出の33%を宿泊したエリアの近所で支出する。
2. イベントの満足度最大化
祭りや花火大会など、町を挙げて行われるイベントで課題となるのが安全な観覧場所の確保だ。しかし民家を観覧場所として訪問客に開放することができれば、より多くの安全で見やすい観覧場所を確保することができる。たとえば山車や神輿が市内を練り歩く祭りではルート沿いの家を民泊に開放する、あるいは花火大会であれば、眺めのよいマンションの1室を開放することで、よりすばらしい観光体験を多くの人に提供することが可能になる。
3.訪問客と地元住民の良好な関係性を構築
宿泊客と住宅提供者がお互いのことを知ることで、その街にも親しみを持つようになり、あたかも自分が住んでいる街であるかのように行動するようになる。Airbnbでは、宿泊客と住宅提供者の双方の安全性を担保するために、身分証による認証や相互レビューなど、さまざまな仕組みを設けている。地元住民と訪問客の絆を深めるという観点で、民泊はホテルとは違う価値をもたらすことができる。
もう3年後に迫った2020年の東京オリンピックでは、国内外から膨大な観光客が訪れるだろう。期間中に日本のすばらしさをより多くの人に、しっかりと体験してもらいたい。そう考えたときに、民泊を活用して地域ぐるみで迎え入れることが大きな効果を上げるための有効な手段になるのではないだろうか。
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