「ごちそうさまでした」に込もる懺悔と感謝 「いただきます」も同時に考えてみよう

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そんな一大イベントに招かれ、友人牧師の家を訪問すると、友人の家族や仲間が大勢いました。そして、一緒に食事の準備をして、いざ食べようと食卓に着くと、友人牧師の発声とともに皆が隣の人の手を握り、食事を頂く恩恵といのちの繋がりに感謝する、食前の祈りが始まりました。

私も見よう見まねで参加しながら、西洋にも食前のことばがあることに感心したのを覚えています。しかし、私がついつい手を合わせて「いただきます」と口にしたことから、食事中の会話のテーマは日本語の食前食後の「いただきます」「ごちそうさまでした」の言葉の説明に押し流されました。

しかし、残念ながら当時の私は英語で「いただきます」は説明できても、「ごちそうさまでした」を説明することはできませんでした。なぜならば、「ごちそうさまでした」の意味を深く考えたことがなかったからです。

「ごちそうさまでした」の意味

一般的には、「ごちそうさまでした」は英語では「Thank you for the wonderful meal.」(素晴らしい食事をありがとう)、「It was a great dinner.」(素晴らしい夕食でした)などと表現され、食事をいただいたことへの感謝の意味が表現されています。

これは、「ごちそうさま」という日本語の本来の意味にも通じています。「ごちそうさま」とは、元来食事などのおもてなしをするために、あちらこちらを走りまわり、食材を求めた苦労に感謝する言葉です。実は、この言葉のルーツは、仏教にあります。

もともとはバラモン教の神さまで、仏教に取り入れられて護法神(仏法や仏教徒を守る神)の一体となった「韋駄天(いだてん)」という神さまがいます。「韋駄天」は、お釈迦さまが亡くなった後、お釈迦さまの歯を盗んだ盗人を駿足で追いかけて捕まえ、その歯を取り戻したという言い伝えがあり、これが足が速い人のことを「韋駄天」ということの由来になっています。

「ごちそうさまでした」の「ちそう」は漢字で「馳走」と書き、「走り回る」という意味を持つ言葉ですが、「韋駄天」が駆け巡って食物を集めたことに由来します。しかし、この言葉はおもてなしをする「美味しい料理」という意味に転じられ、「ごちそうさまでした」は「美味しい料理」(ご馳走)をいただくことや、その準備をしていただいたことに感謝する言葉になったようです。

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