世界「最凶」の毒を持っている生物は何か? その毒を自ら体験した科学者たちがいる
残念ながらスズメバチでは、まだ「歯応えのある感じ」にすぎないようだ。それでは、世界最大のハチ、オオベッコウバチはどうか。シュミットはこう記述している。「眼がくらむほどの激しい電気ショックのようである。使用中のヘアドライヤーをバスタブに落としたような感じだ」。その強烈な痛みは、なんと最高値の4.0だという。
「最凶」の昆虫はサシハリアリ
それでは、オオベッコウバチが「刺されるともっとも痛い昆虫」なのだろうか。実は、そうではない。このオオベッコウバチを超える指数、4.0+を獲得している唯一の種がいるのだ。その痛みを、シュミットはこう表現している。「かかとに3インチ(7〜8センチメートル)の釘を打って、真っ赤な炭の上を歩くようだ」と。
その「最凶」の昆虫は、サシハリアリである。主にアマゾンに生息しているこのアリは、非常に鋭い毒針をもっている。その一刺しがもたらす激痛は、普通の人には耐えられるものではない。数秒で卒倒するか、さもなければ錯乱状態に陥ってしまう。冒険家のスティーブ・バックスホールは、サシハリアリに刺されたときの経験をこう書き残している。
"まず、私は泣き叫んだ。そして深く、のどからしぼりだすようにあえぎ、止まらぬ震えに襲われ、のたうちまわって、けいれんした。私の筋肉はピクピクし、まぶたはしだいに重くなって垂れ下がり、唇の感覚もなくなっていった。私はよだれを垂らして、何に対してもまったく反応しなくなっていた。もし手近にマチェテ(斧)があれば、私は痛みから逃れようと、腕を切り落としていただろう"
読むだけで寒気がするような激痛だ。しかし、ブラジルのサテレ=マウェ族にとっては、このアリはなくてはならない存在であるという。なぜなら、この部族には、サシハリアリをぎっしりと詰め込んだ手袋に10分間手を入れ、ひたすら耐えるという通過儀礼が今も存在するからだ。
儀式が終わるころには、少年の両手はこん棒のように腫れあがってしまうという。信じられないような儀式だが、部族の男たちはこれを生涯で最大25回も行う。ちなみに、儀式中に声をあげたり涙を流したりすれば、もう1度やり直しになってしまうというから、本当に厳しい通過儀礼だ。
ほかにも、自ら生物の毒を"摂取"する人たちがいる。たとえば、「自家免疫実践者」のスティーブ・ラドウィンもその1人だ。彼は10代のころから20年以上にわたり、ヘビの毒を自分の腕に注射しつづけている。
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