LCC「バニラ」が赤字、過熱するアジア航空競争 旅客数は増えているのに単価が大幅下落

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Vエアの異変は昨年8月に起きた。同社は羽田や関空、中部のほか、茨城や那覇にも就航するなど日本路線が主力だったが、台北を発着する日本路線の運休を相次いで発表。最終的には同社の全路線を10月以降運航停止することとなった。日本初就航からわずか1年の出来事だった。

成田空港に駐機していたトランスアジア航空の機体(2014年5月、撮影:尾形文繁)

それから間もなく、Vエアの親会社で創業から60年以上の歴史を持つ復興航空の最期はあっけなくやってきた。昨年11月21日に突然「翌日のすべての便を運航停止にする」と発表。そして翌22日には取締役会で運航の終了と会社の解散を決議した。

同社も成田、関空、札幌、函館、旭川、仙台と、多くの日本路線を運航し、中国に次ぐ収益源だった。だが、過度な競争に加え、2014年から2年連続で起こした墜落事故によるイメージ悪化も打撃となった。

同じ台湾勢では、大手のチャイナエアラインが昨年夏に成田―台北線を1日4便から3便へと減便した。また、米国のデルタ航空は今年5月に同路線を運休する予定だ。

台湾路線で相次ぐ撤退、競争は和らぐか

他社の撤退や減便は、1日4便という最も多くの成田―台北便を運航するバニラにとって朗報だ。五島勝也社長は「需給バランスは引き締まりつつあるとともに、引き続き旺盛な訪日需要がある。運賃施策の強化や機内販売など付帯収入の積み増しで、単価向上を目指す」と話す。実際、搭乗率も下げ止まりつつある。

一方で香港路線は供給過剰の状態が続きそうだ。バニラが1日2便運航する成田―香港線は特にその傾向が顕著で、中国・海南航空傘下の2社が勢いづいている。LCCの香港エクスプレスは昨年10月に1日2便から3便へと増便。FSCの香港航空は昨年6月に1日2便で新規参入したうえ、11月には早くも3便へと増便した。バニラとしてはまず「マーケットシェアの確保を優先したい」(五島社長)考えだ。

2015年度はバニラ、ピーチ・アビエーション、ジェットスタージャパンという日系LCC大手がそろって営業黒字となり、いよいよLCCが「本格離陸」するかに思われた。ただバニラの現状を見ればわかる通り、需給バランスなど外的変化からモロに影響を受けてしまう。LCCの基盤はまだ確立されたとは言えない。

バニラは昨年12月に同社初の海外リゾート路線である成田ーセブ線を就航させた。「話題性があり、いいスタートを切っている」(五島社長)。国内でも、成田―奄美大島線の就航で島の観光が盛り上がった。3月からは関空からの運航も始まる。既存路線が厳しい中で、新路線の成功がより一層求められている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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