廃炉作業の最難関、「デブリ」は取り出せるか ロボット投入阻む内部状況、高線量も障壁

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だが、水中には予期せぬ障害物があちこちにあり、万一触れてしまうと堆積物が舞い上がったり、センサを汚してしまって正確に測れなくなったりする可能性がある。それを防ぐために、針の穴を通すような細心の注意が必要だ。

日立GE、IRIDが開発した形状変化型ロボット。水中にセンサを垂らす(記者撮影)

センサが物体に近づいた際に、線量が急速に上がるようだとデブリである可能性が高い。その場合は、デブリに接触する前に下ろす作業をやめなければならない。そうしたこまやかな作業を4日間にわたって続ける計画だ。

1、2号機の調査ともに共通する重要課題として、作業員の被ばく線量の抑制がある。遮蔽によってだいぶ下がったとはいえ、2号機の貫通口の周辺の空間線量は毎時3~6ミリシーベルト。1号機でも2~3ミリシーベルトもある。作業員の年間の法定被ばく線量限度は50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトであることから、いずれも長時間の作業はできない。

1号機の内部調査では、1班当たり4~6人が6班に分かれて順繰りにロボット投入作業にかかわる。線量限度との兼ね合いで1班の作業時間は1日20分にとどめる。

格納容器内部は想像を絶する高線量

格納容器内部の放射線量はケタ違いに高い。2号機の事前調査では、画像からの解析データではあるが毎時530シーベルトという値が報告された。実測しなければ正しい値はわからないが、毎時500シーベルト以上というレベルは人間が数分で死に至る線量だ。いずれにしても、格納容器内に作業員が入ることはできず、ロボットによる遠隔操作にならざるをえない。とはいえ、ロボットを入れる際には人力が頼りだ。

デブリの存在が確認できたとしても、取り出すには相当の困難が予想される。格納容器の止水はもとより、燃料デブリの切削や容器への収納、取り出したデブリの保管や処分など、いずれの技術も未確立だ。誤って格納容器内の閉じ込め機能を喪失させると、放射性物質の汚染が外部にも広がる。このことは絶対に防がなければならない。

40年とも、それ以上とも言われる廃炉作業は、事故から6年にして重大局面を迎えている。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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