9歳に刑事罰適用を求めるフィリピンの異様 ドゥテルテ政権下で提出された驚きの法案 

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現行の少年法は認めていないが、15歳未満の子どもが軽犯罪で留置場や青少年鑑別所に入れられるケースも多い(撮影/フォトグラファー・清水匡)

国連事務総長や米国の前大統領バラク・オバマ氏への暴言が世界で取りざたされながら、国内では高い人気を誇るドゥテルテ大統領。その人気を背景に、強権的な犯罪取り締まりを続けている。だが、貧困にあえぐ子どもたちを巡って、驚くべき法案が提出されていることは、あまり知られていない。

フィリピン国家警察の発表によれば、2017年1月11日現在で6268人。ドゥテルテ大統領政権下で「取り締まり目的」で殺害された薬物の売人と使用者の数だ。

言うまでもなくこれは、強権的な麻薬撲滅政策を推し進めた結果だが、この数字以上に世界に広く知られるべきことがある。16年6月、フィリピン国会下院に提出された「刑事責任年齢を『9歳以上』に引き下げる」という法案のことだ。

フィリピン国内で起こる犯罪の背景にあるのは貧困だ。その影響をとりわけ大きく受けているのが子どもたち。路上生活をする子どもたちの多くは家庭に問題を抱え、家族と共に生活できない状態に置かれている。生きていくためには、ギャングに所属することで身を守るしかない。結果、大人に利用され、犯罪に手を染めてしまう。

13歳の少女が留置場に

刑事責任年齢引き下げ法案が提出されたのは、現在の少年法が犯罪に利用されている現実があるからだ。現行法では、15歳未満には刑事責任を問えない。それを逆手にとって、15歳未満の子どもを犯罪に関与させる大人たちがいる。

現行の少年法はまた、15歳以上18歳未満の少年が罪を犯した場合、裁判が行われるまで一時的に更生施設に収容することとし、15歳未満の場合は在宅での更生プログラムを義務づけるが、こうした施設やサービスも現実に追いついていない。15歳未満の場合でも、留置場や青少年鑑別所に収容されるケースは決して少なくないし、不衛生な環境で暴行や搾取を受けるなど、劣悪な状況に置かれている。

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