人が少ないだろうシティホテルの喫茶室に移る。十数分かけてなんとか緊張を解き、話を聞く。彼女は偏差値70を超える国立大学の現役医学生だった。本人の顔写真入りの学生証も確認させてもらったので間違いない。
「パパ活は、やっぱり売春ですよね。今、連絡取る人は2人います。40代の方々で詳しいことは知らないです。その人たちのことは、別に好きではない。ただ食事とかエッチをして、おカネをもらうみたいな。でも、全然慣れない……。特定の人と何回も会うのは怖いし、やっぱり私が会いたいって思わないし」
「パパ」とはすべて偽名でやり取り
2人のパパと会うのは月1ペース。彼女は恋愛ではなく、売春に近い形でパパと交際していた。その自分の行動に漠然とした不安があり、身元がバレるのが恐ろしく、パパとはすべて偽名でコミュニケーション。大学名やプライベートのことなどは、すべてウソをつく。好きではない年上男性とセックスする、ウソをつく、不安で悩む、すべてがストレスとなっている。
「プライベートに入って来られるのが怖い。結び付きが強くなるのがちょっと嫌だなって。だからパパといっても、すごく中途半端な感じです。あと大学1年の夏休みから風俗もやっています。……ハンドヘルスです」
うつむき、ずっと声が小さい。ハンドヘルスとは男性客を手淫で抜くソフトな性風俗だ。求人広告では脱がない、触られないなどとサービスのソフトさをアピールし、性風俗未経験の女性を集めている。
1週間前に掲示板を眺めてから、今日までに私と女性編集者で何度も彼女とメールのやり取りをした。連絡先を教えてくれない、名前がいくつかあるなど、難航したが、その行為の一つひとつは風俗で働いたり売春する自分自身の行動に対して、後ろめたさがあることが理由だった。
現在の日常を誰にも話していない。おそらく誰かに話し、自分のしていることが正しいのか正しくないかを判断したい、誰かに間違っていないと言ってもらいたい、といった意図があるように思えた。秘密を抱える彼女は孤独なのだ。
「パパのひとりはもともとお客さんです。すごく忙しいので、風俗店は定期的に入るわけでなくて、おカネがちょっと足りないってときだけ。不定期で急の出勤だから、お給料は少ないときは1日5000円とか。忙しくても2万円くらい。全然おカネがもらえなくて困って、お客さんに“2万円あげるよ”って誘われたことが始まり。その人と会ってエッチして、でも忙しい人なのであんまり会えなくて。結局、最近、連絡をいただいた出会い系みたいなサイトに登録しました」
新宿を指定したのは彼女だ。今日この取材が終わった後、ハンドヘルス店に出勤するという。
「出勤はすごく少ないけど、風俗はもう2年半くらい。基本的には全然平気じゃないです。私、そのときは彼氏ともしたことがなくて、なにも経験がないまま今の店に応募しました。仕事は慣れるけど、平気じゃないっていうか。だからサービスが軽いところと思ってハンドヘルスです」
彼氏という言葉が出てきて、若干目に涙が浮かぶ。彼氏は同じ高校の先輩で別の国立大学に通う。高校時代から4年間付き合い、肉体関係になったのは、なんと1年半前。広田さんは処女のまま風俗嬢になり、付き合って2年以上が経った恋人と処女喪失後、罪悪感を抱えながら、パパを見つけて売春するようになった。
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