中国携帯市場に参入 シャープ新戦略の勝算
シャープが中国の携帯電話市場に参入する。中国には過去、NECや松下電器産業など日本の携帯メーカーの大半が参入したが、各社ともシェアと採算が見込めず撤退した。シャープは上海地区の液晶テレビシェアで首位を走るなど中国で好調。難攻市場の携帯ビジネスで、どう勝算を見込んでいるのか。
「他社が失敗した原因は販路」--。長谷川祥典常務はそう話す。シャープは今回、先発した国内同業者とは異なる販売戦略を選ぶ。
第1弾として発売する「920SH」(ソフトバンクモバイルの昨冬モデル)の現地対応製品は、地元の携帯販売チェーン最大手「迪信通」を通し北京と上海のみで販売する方針だ。現地専用モデルも順次投入するが、「目標販売台数は発表するまでもないほど僅少」(関係者)と当初は数量にさほどこだわらない。これは、中国全土にバラまくように製品を卸し、シェア急拡大を狙った日本の先発メーカーとは正反対の戦略だ。
過去、在庫管理に甘さ
「シェアは伸びたが在庫の山」「全国の店舗に何台あるのか把握できない」。撤退したメーカーの関係者は口をそろえる。日本勢が苦戦したのは欧米大手との競合だけではなかった。メーカーの多機種・大量出荷路線と、現地販売店のずさんな在庫管理とが、大量の流通在庫を発生させたのだ。日本勢の進出が盛んだった3年前には異業種の地元企業の参入も相次ぎ、中国全土で実需の6倍もの在庫が常時滞留していたともされる。
「厳選した販路で実売状況を把握しながらやる」と長谷川常務は慎重姿勢だ。シャープは、今後の製品追加は年2~3機種にとどめ、供給面でも広東省の下請け工場での小規模生産から始める考えだ。
国内の他メーカーにとっても、海外市場への再挑戦は早晩挑まざるをえないハードルになりそうだ。市場調査会社・MM総研によると、今年の国内出荷台数は前年比9・2%減の4610万台にとどまる見込み。一方でソフトの複雑化や高度化する通信規格への対応などで開発コストは高止まり状態。どのメーカーにとっても、海外で販売数量を増やさなければ、採算悪化の道をたどるのが明らかだ。
中国を足場に他の新興市場への拡大も狙うシャープ。同社に続くのはどこか。
(杉本りうこ =週刊東洋経済)
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