(中国編・最終話)喧嘩ができるほど仲がいい関係

 日本も中国も国家としては大きな変化と試練の渦中にあるように私には思える。
 中国は急激な成長がもたらす多くの困難やさらに先の大震災の復旧や救済のような様々な試練に直面している。公開された様々な本気の議論は、中国の変化を物語っているように私には思える。
 日本もまた体制自体は民主主義だが、同じように国依存の構造から、自立した民や市民社会の発展が問われている。
 私たちが進めた民間対話は、こうした変化や試練の中で生まれた試みであり、「民の対話」は国境を超えて繋がったのである。
 その試みを直接作り出したのは私や多くの中国の友人だったが、それを真剣な議論の舞台に発展させたのは、両国を代表する有識者である。一人一人が両国に影響力を持つ多くの有識者がまさに手弁当で民間対話の舞台に参加し、さらに政府関係者も加わり、議論は国民に公開されるようになった。

 私が、中国との民間対話に取り組んだのは言論NPOを立ち上げて3年目のことである。開発援助の専門家のデビット・コーテンは著書「NGOとボランティアの21世紀」の中で、非営利組織の成長段階を開発援助の課題に即して4つに区分している。非営利団体は人道援助から、自立支援、さらには地域の持続的な発展のための課題解決で地域や国境を越えて活動を進めるという、ものである。
 世界のNGOの調査から導かれたこの区分は、私たちのようなアドボカシー型(政策提案型)のNPOにも直接あてはまるように思える。
 有権者のための質の高い、参加型の議論の舞台を作るために始まった言論NPOの活動もまた、日本の課題解決のために国境を超え、中国との対話につながる必要があったのである。
 ただ、私の夢はこれで終わったわけではない。この日中対話の舞台で両国関係だけでなく、アジア、さらには世界の課題解決の議論が動き出し、その内容はアジアや世界にも発信される。さらに議論は一年に一回のフォーラムで閉じるのではなく、継続的に行われ、いずれはアジアの舞台に発展し、アジアの声が世界に広がる。そんな民間対話の舞台を私は作りたいのである。

工藤泰志(くどう・やすし)
言論NPO代表。
1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒業。
東洋経済新報社で、『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。
言論NPOとは
アドボカシー型の認定NPO法人。国の政策評価北京−東京フォーラムなどを開催。インターネットを主体に多様な言論活動を行う。
各界のオピニオンリーダーなど500人が参加している。
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