テレビが「面白くない」のには理由がある 現役番組制作会社スタッフ匿名座談会

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Aさん:一方の下請け制作会社の給料は、彼らの半分程度。30代で年収450万円、40代で550万円といったところでしょうか。うちは残業代が出ません。

Bさん:だから30代でフリーになる人も多いですね。フリーで生きていくには、企画力や仕事のスキルもあるけど、何より人脈。なかでも力のある局の社員。何本かレギュラーで入る見込みが出てくれば、フリーになったほうが収入だけならいい。

Dさん:フリーなら15分の特集1本作って40万円くらいがギャラの相場かな。まれではあるけど、テレビ局に出向して、そこで見初められ、中途入社でテレビ局の正社員になるケースもあるね。だけど報道関係は真面目な人が多いから、給料より自分のやりたいことをできる場所を求める人が多い。

Eさん:制作費が下がって、いまでは海外の秘境のドキュメンタリー番組などはまず企画が通らない。テレビを見るのは高齢者が中心だから、どうしてもグルメや旅番組、病気や健康などの情報番組が中心になってしまう。報道やドキュメンタリーの分野で優秀な人はNHKを目指しますね。いまでも予算は潤沢に出ますから。

Dさん:内容や番組によって異なりますが、民放なら15分で100万~150万円、30分で400万円、60分で800万円、120分で900万~1200万円といったところが相場だと思いますが、それがNHKなら1.5倍近い。国際紛争などの硬派なネタも通る。

あまりに過剰な広告主への配慮

Eさん:制作費の問題って、別な問題も生んでいるように思う。テレビの影響力がどんどん小さくなって、CMが売れなくなった結果、起こったのはクライアントへの過剰な気遣い。訴訟リスクがあるものも敬遠される。

Aさん:BPO(放送倫理・番組向上機構)も厳しくなって、この10年で好きなことをできなくなった。よく、芸人の方からは「もっと思い切ったことできないの?」と、愚痴をこぼされます。昔は象を借りてきて、テレビ局の周りをレースさせるなんて企画もあった。僕ら世代がテレビにかじりついて見た「ダウンタウンのごっつええ感じ」なんて、いまではほとんど放送できないでしょう。その点、いまの芸人さんはかわいそうですね。

Cさん:コンプライアンスも年々厳しくなるばかり。「一般の人には全てモザイクをかけろ」と言われ、それで渋谷のスクランブル交差点なんて映したら、ほぼモザイクですよ(笑)。スポンサーチェックも厳しくなるばかりで、ある会社のドキュメンタリーの食番組を制作していたときは、他社商品が映るのはもちろんNGで、食事のマナーが悪いカットもほぼNG。もはやドキュメンタリーじゃない。

Aさん:すべてが悪循環ですね。若者のテレビ離れから、現場を支える意欲ある若手テレビマンがいなくなり、CMが売れなくなった結果、低予算と過剰な規制のなかで番組を作らないといけない。これではテレビが面白くなるはずがない。

Cさん:SNSも一役買っていますね。客席観覧スタイルの過去のバラエティー番組の映像を使いたかったのですが、「観覧の人すべてに承諾をとってください」と言われ、諦めました。スクリーンショットにとられ、拡散されるのが怖いようです。肖像権やプライバシーが大事なのはわかるのですが、行き過ぎると何もできなくなります。

Bさん:テレビ好きにとっては、生きづらい時代になるばかりですね。

(構成/編集部・澤田晃宏、竹下郁子)

※AERA 2016年11月28日号

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