中国スマホの台頭で電子部品はどうなる? 村田、TDKは「アップル1本足」からの脱却急務

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中国でも高速データ通信が可能な第4世代(4G)化が進む中、電子部品には日本メーカーの高い技術力が求められている。さらに複数の周波数に対応するための部品が必要となるなど、スマホ1台当たりの部品数も増加中だ。その証拠に村田製作所はこの10月、金沢に新しい生産棟を竣工、複数の周波数をより分けるための電子部品の生産能力を増強した。

足元の10~12月に関してはアップルの売り上げも回復する見込みだ。前評判の低かったiPhone7/7plusだが、ライバルである韓国サムスンのGalaxy Note7の発火という敵失も追い風になる。サムスン向けに関してはTDK子会社の電池も使われていたが、石黒成直社長は「それほど大きな影響を見込んでいない」と傷は浅いようだ。

スマホ市場でコモデティ化が進捗

もっともiPhoneが一時的に復調したとしても、以前ほどの影響力がないことは明らかだ。高価格帯メーカーの勢いが落ち、値段と品質のバランスを取った中国メーカーが迫る現状は、スマホ市場においてまさにコモディティ化が加速していることを示している。日本の電子部品メーカーは、中国メーカーの割合が高まることでアップル一本足打法のリスクは分散される。だが、「1台当たりに搭載される部品数や金額はiPhone向けの方が多い」とモルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤昌司氏は言う。

村田製作所はHEMS(家庭内でのエネルギー管理)などの展開を見据え、ソニーの電池事業を買収。TDKも現在進行中の中期経営計画で、自動車向けの売上比率を17%(2015年3月期実績)から30%(2018年3月期)に引き上げる目標を掲げるなど、スマホ依存からの脱却を目指している。中国スマホ向けで稼げる間に、次の成長の芽を育てていけるか。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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