「トランプリスク」は米大統領選後は続かない もし相場が大きく荒れても短期間で終了へ

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ただ、当初予想よりもトランプが追い上げているなら話は別だ。この95人が勝利のカギを握るとなると、機関投資家は「クリントン圧勝」のポジションを機械的に調整しなければならない。100%クリントンで組んだポジションは、30%程のヘッジ売りに変化した、というのが先週末のイメージだ。短期波乱は否めないが、もし波乱があるとしたら、今週中のことではないか。

世界を慌てさせたブレグジットも、議会承認が必要などとして、「無期延期」の様相を示して来た。仮にトランプ勝利となっても、膨大なスタッフ資源を抱える大国の政策が急に変わるわけではない。優秀なスタッフが「寄ってたかって」作る政策に、極論を持つ大統領の個人的な考えがどれほど採用されるだろうか。

特にNY株が、新大統領の下で、気迷いながらも世界で一番強い景気指標を持つ中で、下げ続けるとは思えない。目先最大の注目点だった10月の雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比16万1000人増と市場予想(17万5000人)を下回ったが、8月、9月分がそれぞれ4万5000人も上方修正され、失業率も4.9%に低下し、労働市場の回復が確認された。

米サプライマネジメント協会が発表する重要指標であるISM製造業、非製造業の数字も、さらに中国のPMI(購買担当者景気指数)の数字も良好で、「適度な温度」は保っている。

米国株に過熱感なく、大統領選後は落ち着いた相場へ

アメリカ株は天井の形になっていない。これはダウやS&P500のチャートの形のことではない。年内利上げがあったとしても、1回目と2回目の利上げに1年を要するような気迷い経済の最中には、短期的な波乱は有っても、大天井は打たない。

もし大天井を打つときは過熱感が生じて、それを止める政策の失敗がきっかけとなる。今のアメリカにその形はない。今週のイベントで大統領選以外に株価に大きく影響を与えるものはないので、週末には落ち着いた相場に戻ると見ている。

さて日本株だが、10月の予想外の強さは、日経平均のEPS(1株利益)が1150円台に低下したように、決算発表が良かったわけでも、新緩和策を期待したわけでもない。ただ外国人投資家の短期筋が買いに動いただけだ。

そして先週の下げは、月間で日経平均1000円近くも上げたことに対する利益確定の売りによる下げに過ぎない。大統領選前の調整継続も予想の範囲内で、75日移動平均(1万6700円台後半)、直近安値10月14日の1万6727円が重要なテクニカルポイントとなる。

ここを切ると、200日移動平均(1万6580円台)が下値の目安となる。「ここまで下がれば買いたい」と言う投資家は多い。希望通りに行かないのが相場だが、どうなるか。今週の日経平均予想レンジは 1万6500円―1万7400円としたい。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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